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「A!?」
一番近くにいたゴンが、バランスを失ったAの体を慌てて受け止めた。
続けて駆け寄ったレオリオがAの額に手を当てる。
「少し熱があるか」
『こ、このくらい平気だよ』
起き上がってヘラリと笑う姿は心許ない。
「無理はしねぇ方がいい」
『大丈夫だよ』
「A、オレがホテルまで運ぶよ!」
ゴンが「任せて」と右肘をぐっと曲げて見せた。
前屈みの体勢で、Aに背を向けるゴン。決めたことを覆さないゴンの意地に張り合う元気はなく、素直に運ばれることにしたA。背中に寄りかかって体重を預けた。
『ゴン、重たくない?』
「ぜっんぜん平気!」
Aの髪がさわさわとゴンの顔をくすぐる。爽やかな甘い香りは、ゴンを不思議な心地にさせた。
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ゴンに背負われて帰路に就いたA。疲労感と僅かな揺れが、いつの間にかAを眠りへと誘っていた。
「A、ついたよー」
『ありがとう、ゴン』
「どういたしまして」
部屋に着いたゴンはAをベッドに下ろすと、「そうだ」と、思い出したように振り返った。そしてぐいと距離を縮めると、互いの額と額をくっつけた。
『ゴンってば大胆』
ふふっとはにかむA。頬が赤いのはきっと熱のせいだ。
「ミトさんはいつもこうやって測るんだけど。あんま分かんないなぁ」
『私、普段が熱低いから。ゴンの方が暖かく感じる』
「そういえば、キルアと何かあった?」ゴンが尋ねようと思ったとき、僅かに早くAが口を開いた。
『あのね……ゴンに伝えなきゃいけないことがあるの』
「何?」
『私ね、念を酷使すると熱が出るんだ。昨日はキルアに向けて念を使っちゃって。これはその反動だと思う』
少し口ごもるA。ゴンが思わず聞き返す。
「ええっ!? どういうこと?」
『そういう制約なの。氷を冷やす分、体内に熱がこもる。それが夏には顕著にでやすいみたい』
気になったのは、キルアに念を使ったってとこだったんだけどな。二人のことは聞かない方がいっか――心の中で呟くゴン。
『念のために伝えとく』
これはAの考え得る可能性。もしも旅団と対峙することになって、念を使うときのため。自身のハンデを知っておいてほしかった。
『キルアには内緒にしてね。まだ昨日のこと謝れてないし……それに』
「?」
『ううん、何でもない』
(心配かけたくないから)
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冬瀬(プロフ) - つんつんさん» いつもコメントありがとうございます!他作品と被らない展開にしたいと思って試行錯誤してるので嬉しいです!!ヨークシン編途中ですが、ここで続編に移行します。続きも楽しんでもらえると幸いです! (2022年1月16日 6時) (レス) id: 033bbfc38e (このIDを非表示/違反報告)
つんつん(プロフ) - 今まで結構な数のハンタ夢小説を読んできたと思っているのですが、このパターンは初めてですごい新鮮味があって続きが気になります!次回も楽しみにしてください! (2022年1月16日 3時) (レス) @page44 id: 6a1440072c (このIDを非表示/違反報告)
冬瀬(プロフ) - つんつんさん» 反応が速い!? 早速すぎてびっくりしました。めちゃ嬉しいです!次回は来年更新しますね〜!つんつん様もよいお年を。 (2021年12月29日 17時) (レス) id: 033bbfc38e (このIDを非表示/違反報告)
つんつん(プロフ) - きゃぁ〜!やばいですね夢主ちゃんカッコ良すぎます。こんなんなったらキルアもゴンも惚れちゃいますね私は惚れました。2021年夢主ちゃん大活躍で終われそうでもう何も悔いはないです。そして!またまた良いところで終わりましたね〜!続きも楽しみに待ってます (2021年12月29日 17時) (レス) @page41 id: 6a1440072c (このIDを非表示/違反報告)
冬瀬(プロフ) - つんつんさん» いつも感想ありがとうございます!続き更新しました〜。夢主活躍回!ぜひご覧ください (2021年12月29日 16時) (レス) id: 033bbfc38e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冬瀬 | 作成日時:2019年6月24日 0時