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Aの基本的な業務はカフェでの接客だった。飲み込みの早いAは二日足らずで、レジ係、客寄せまで任せられるようになった。
清潔感のある制服に身を包み、揃いのキャスケット帽に髪をしまいこんだA。接客に可愛い子がいると噂が広まり、過去最高の売れ行きを記録したという。ただし本人は無自覚の様子だった。
オークションを控えたヨークシンは、多種多様な人々が集う。老若男女あるいは堅気でないような人も店を訪れる。
彼が店を訪れたのは、Aが働き始めて五日目のことだった。
『お待たせしました。ブレンドコーヒーとプリンです』
「あぁ、どうも」
両耳のイヤリングが特徴的な青年。女性受けしそうな顔だ(そういえば、女性従業員が目をハートにしていた)。
一日に多くの客と対面する中、なぜだか印象に残った。彼が念能力者だったからかもしれない。
『またのご来店お待ちしてます』
ふと、男性の座っていた席に本が置いてあるのに気付いた。店の外に姿があることを確認し、後を追いかけた。
『お客さん、忘れものです』
振り返った男性に、本を手渡す。そのとき、不自然な突風で帽子が宙を舞った。
「……珍しい色だ」
『え?』
柔らかな絹のような髪がなびいた。
男性の声は風の音によって遮られ、Aには届かなかった。
「本、届けてくれてありがとう」
『いえ、こちらこそ』
拾ってくれた帽子を受け取って答えた。去っていく男性の姿をちらりと見て、Aはかけ足で店に戻った。
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『お世話になりました!』
店長、そして従業員の面々の前で、ぺこりと頭を下げた。
「また困ったときは来るといいよ」
『タトルさんっ!また来年もプリン食べに来ますね』
休憩中に聞いたのだけど、タトルさんは昔ハンターに助けられたことがあって、それ以来ハンターに甘いらしい。
当初の一週間の予定だったアルバイトは十日間に延長してもらえた。例年の倍以上の売上となったこととあり、給料には大分色をつけてくれた。
――こうしてAの二週間は終了したのだった。
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冬瀬(プロフ) - つんつんさん» いつもコメントありがとうございます!他作品と被らない展開にしたいと思って試行錯誤してるので嬉しいです!!ヨークシン編途中ですが、ここで続編に移行します。続きも楽しんでもらえると幸いです! (2022年1月16日 6時) (レス) id: 033bbfc38e (このIDを非表示/違反報告)
つんつん(プロフ) - 今まで結構な数のハンタ夢小説を読んできたと思っているのですが、このパターンは初めてですごい新鮮味があって続きが気になります!次回も楽しみにしてください! (2022年1月16日 3時) (レス) @page44 id: 6a1440072c (このIDを非表示/違反報告)
冬瀬(プロフ) - つんつんさん» 反応が速い!? 早速すぎてびっくりしました。めちゃ嬉しいです!次回は来年更新しますね〜!つんつん様もよいお年を。 (2021年12月29日 17時) (レス) id: 033bbfc38e (このIDを非表示/違反報告)
つんつん(プロフ) - きゃぁ〜!やばいですね夢主ちゃんカッコ良すぎます。こんなんなったらキルアもゴンも惚れちゃいますね私は惚れました。2021年夢主ちゃん大活躍で終われそうでもう何も悔いはないです。そして!またまた良いところで終わりましたね〜!続きも楽しみに待ってます (2021年12月29日 17時) (レス) @page41 id: 6a1440072c (このIDを非表示/違反報告)
冬瀬(プロフ) - つんつんさん» いつも感想ありがとうございます!続き更新しました〜。夢主活躍回!ぜひご覧ください (2021年12月29日 16時) (レス) id: 033bbfc38e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冬瀬 | 作成日時:2019年6月24日 0時