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一年前のある満月の日__
「仕事だよ」
『はい』
命じた青年に対し、白髪の少女は短く答えた。
少女は"氷姫"という通り名の殺し屋だった。その日の仕事はとあるパーティーの主催者の男の殺害。
髪を結われ鮮やかなショートドレスを着ると、少女は命じられるままにパーティー会場へ向かった。
「娘、見ぬ顔だな」
『初めまして、ユズリハの代わりで参りました』
「ほぉ、ユズリハの奴、こんな愛らしい娘を隠しておったとはな」
少女が主催者に挨拶すると、男は機嫌が良さそうに笑った。品のない笑い方だ。
酒がまわった頃に殺るか。頭の中で考えながら、少女は自然を装って会場を歩く。
そのとき、視界の端に映ったタキシードを着た男性が目に留まった。後ろで一つに縛った艶やかな黒髪に少女は少しだけ目を奪われた。
パーティーが中盤にさしかかると、主催者の男は一度奥の部屋へと退室した。好機だ。
少女は外側から窓を割って部屋に侵入し、中にいた男を凍りつかせた。__が、突然明かりが消え、少女は何者かに腕を掴まれてしまった。
「ようやく捕まえたぞ、氷姫!」
明かりが点き、扉を開けて入ってきたのは主催者の男。少女は首にナイフを当てられ、いくつかの銃口が向けられていた。
少女が殺した人間は囮だった。少女を取り囲むように、武器を持った男の部下が十数人。逃げ道はない。
まとめて凍らすには人数が多い__少女は作戦を練り直す。しかしその必要はなかった。少女を拘束していた男が突然倒れたのだ。
倒れた男の額には細長い金属のようなものが刺さっていた。
「誰だっ!?」
主催者の男が声をあげる。音もなく姿を見せたのは、少女が会場内ですれ違った黒髪の青年だった。
「部下共さっさとこいつを殺れ!」
一人が二人に増えようが問題ないと言いたげだったが、青年の次の言葉を聞くと、男から血の気が引いた。
「君の部下はもういないよ」
抑揚がなく淡々とした声だ。床にはその場にいた男の部下全員が倒れていた。
青年が冷たく無機質な瞳で男を捉える。その瞳に怯えた男は這うようにして後退する。そのとき偶然手に触れたマシンガンを手に取ると、無我夢中で乱射した。下手な銃弾も数打てば当たるわけで、弾丸の一つが少女の髪飾りをかすった。数本の髪の束がはらりと落ちた。
それを見た青年は少しだけ眉をひそめると、躊躇なく男を殺してしまった。
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冬瀬(プロフ) - 作者です。誤字等、まとめて修正しました。 (2022年3月5日 9時) (レス) id: 033bbfc38e (このIDを非表示/違反報告)
冬瀬(プロフ) - 妄想癖さん» 質問ありがとうございます!光の加減で、白色(限りなく無色透明)に見えるイメージです(言葉にしがたい)。光の反射とかで頭皮は見えないはず 笑。。「宝石の国」のキャラクター達みたいな感じです(気になる方は調べてみて) (2021年2月16日 13時) (レス) id: d80ecf15a6 (このIDを非表示/違反報告)
妄想癖(プロフ) - 無色透明ってことは禿げて見えるんですか?! (2021年2月8日 0時) (レス) id: 36f953a85d (このIDを非表示/違反報告)
冬瀬(プロフ) - 作者です。ちまちま修正中。 (2020年2月27日 23時) (レス) id: d80ecf15a6 (このIDを非表示/違反報告)
しらほ(プロフ) - フォスさん» きっとトプ画のことですね??多分。一言添えていますがトプ画は雪兎様に描いて頂きました。とても可愛いですよね!! (2019年2月24日 23時) (レス) id: 5f12e77188 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冬瀬 | 作成日時:2018年8月15日 19時