八十九話 ページ14
｢ここでは敬語は無くして良いって言ってるのに｣
『それはあってはならないことでございます』
｢私が言ったら良いのよ！私は偉いのー！｣
『くだらないことに権限を使わないで下さい。今日のご朝食はハニートースト、生野菜の盛合せです』
｢ハニートースト！？Aは私の事ホント大好きねー！｣
『玉ねぎもきちんと召し上がって下さい』
｢うぐ...｣
...と、こんな感じの女の子であるが、エリザベスは“普通”の女の子であった。
奴 隷を取らない、シャボンのマスクも嫌がる、独特な言葉も嫌い...
子供なので、まだ許される部分もあるだろうが、このままでは、彼女の未来が怪しいことは確かだろう。
エリザベスもAと同じような考えを持っていた。
エリザベスの場合は、こうなった原因はエリザベスが大の親嫌いというものだと考えられる。
親は典型的な天竜人であった。
奴 隷も取り、我儘を言ったり、気に入らなければすぐに捨てる。
私の方が大人よ、というエリザベスの発言には、反論の余地もない。
｢ねェA、早くゲームやりましょ！｣
『片付けをしたらやりましょうか』
｢えーどれくらいかかるの？｣
『そこまで時間は要しません』
｢分かった、準備しておくから早くね！｣
『かしこまりました、早急に済ませて参ります』
丁寧に扉を閉め、早足で厨房に向かって片付けを済ませる。
そして、言われた通り急がなければならないので近道をすることにした。
途中で、父と母がいる天竜人の部屋を前を通ることに気づいたA。
珍しく、扉がほんの少し空いていたので父と母の様子を見たいと思い、
気配を消しながら扉から覗き込んだ次の瞬間
2つの静かな銃声が鳴った。
音に連動するように倒れるのは
奴 隷ではなく
Aの父と母だった
扉の向こうでは、地面で早くも遅くもない赤いモノが広がっていく。
Aはその光景によって、体と地面が固定されたかのように固まった。
その部屋にいた他の使用人によって父と母は引き摺られて奥の部屋へと運ばれてしまった。
遠くから足音が聞こえ、突っ立っていると不味い、と思ったAはやっと足が動いた。
今のは何かの悪い夢だ、と自分に強く言い聞かせ、エリザベスの部屋へと向かっていった。
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作者名：つんてん | 作成日時：2022年11月3日 19時
