検索窓
今日:3 hit、昨日:6 hit、合計:613,753 hit

琥珀色の宝石6 ページ36

:





12時を少し過ぎて学校に到着し、
逸る足でAを探してもどこにも見つからない。
それどころか校舎の内の1棟が妙な呪力に覆われ、
さっきから胸がざわついて落ち着かない。

異様なほど人影はなく、静かで薄暗い校舎。
サングラスを外して中に入ったが、
結界は帳の類ではなく、入ることに障害はない。
だが妙な不快感は増すばかりで、
根拠もないまま最も呪力が歪んだ空間へ急いだ。

下らない呪符の張られた扉を煩わしく蹴破り、
やはり中にいたのは、この世界で一番の大事なもの。

椅子に縛り付けられ、
知らない男の汚い手があの子の口を塞ぎ、
綺麗な瞳は初めて見る涙で濡れている。
その瞳に伸ばされたあの指は、これから何をするつもりだったのだろう。






「五条悟!?、なぜここに…。任務のはずだろう!?」

「ゴミが僕のAに触るな。お前、今その手で何しようとした?」







両足を潰して床に転がった男の
Aの目に触れていた右手を踏み潰す。
しかし問い詰めても足の痛みで喚くだけの男。
会話できない男に苛立ち左手も同じように潰すと、
後ろで咽る声が聞こえ慌てて振り返る。








「ごめんね、A。僕のせいだ。ああ、泣かないで。もう大丈夫だから。」

『…っ、さと、る』






「傷付けられたの?怖い目にあった?ほら、僕に見せて。」

『…っ、』






膝をついて顔を覗き込んで、
六眼で瞳を見てみても、異常はない。
初めて会ったとき、あんな状況でも泣かなかった子が
こんなに泣いて、全然止まらない。
両手で頬を包んで溢れてくる涙を拭っても、
何度声をかけて落ち着かせても止まらない。







「A…?」

『…ごめ、ん。待って、泣き止む…、から。』





必死に目を擦って涙を止めようとしても
赤くなるばかりで本当に止まらない。
謝ってもっと擦ろうとするAの手を掴んで
僕の胸に顔を当ててなるべく優しく抱きしめる。
背中を撫でて甘やかしても、華奢な肩はまだ震えたままだ。









「ははっ、いくらお前が宥めても無駄だ。そうだろう?冬賀A。その男は【お前が大事なわけじゃない。】」

『っ、』




「A?」






男の声に反応するように
腕の中で体を小さく震わせるA。
床に這い蹲った男に目を向けると
喚いている口の中に呪印が見え、やっと状況を飲み込めた。




「こっちを向け。その瞳を僕に見せるんだ。絶望した琥珀色の宝石がどんなに美しいか、最期に見せてくれ!」

琥珀色の宝石7→←琥珀色の宝石5



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (532 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1266人がお気に入り
設定タグ:呪術廻戦 , 五条悟 , 両面宿儺
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

茉莉 - この作品が好きです。更新、待ってます! (2020年11月22日 22時) (レス) id: a68061a5cd (このIDを非表示/違反報告)
Gettion - え…心臓痛くなるくらい好きです。応援しています! (2020年11月6日 18時) (レス) id: b24edd395c (このIDを非表示/違反報告)
uka8502(プロフ) - 更新停止ですか??ホントに面白すぎてハマりました!一気に見ました!!更新ホントにお願いしますっ! (2020年10月19日 1時) (レス) id: 7913de20e0 (このIDを非表示/違反報告)
AiRIN(プロフ) - いつも楽しく拝見しています!正直、縞さんの作品ならどれも大歓迎ですが、しにたがり姫か好きなので、続編を待ってます! (2020年5月17日 13時) (レス) id: 931e2c7403 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2020年4月3日 2時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。