知らない顔８ ページ19
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繁華街からはタクシーで約20分
あまり来たことのない都市部の高級地に冥さんのマンションはあった
目に映るもの全てが新鮮で周囲を眺めながら歩いていると
あっという間に部屋に着き、快く中へ通される
すでに着替えとお風呂の準備も済まされ
私のために、と冷蔵庫には冥さんとは縁遠そうなジュースまで、
完璧なまでに快適でむしろ緊張してきた
明日は土曜で学校もなく、早く寝る必要もない
せっかくなら外の景色を見たいとベランダに出る許可を得て
備えられていた椅子に腰掛けた
赤や黄色や青、緑、紫、白、
本当に色んな色の光が街に散りばめられ華やかで
自分にはまだ立ち入れない遠い世界を見ているような気分になる
カァ、
『わっ、…ありがとう。』
下にばかり視線を向けていると突然空から黒い影が見える
正体は先ほど見かけたカラスで
隣のテーブルの上にとまり、そっと携帯を返してくれた
近くで見ると嫌われているイメージのカラスも案外可愛らしい
そっと指で首のあたりを触ると
小さくカァ、と鳴き摺り寄って来る
『…カァ、』
カァ、カァ…カァ
真似して鳴いてみると返事をするように何度か鳴き返す
それが何とも愛らしく、面白く、しばらく繰り返し遊んでいると
窓の所で冥さんが立っていることに気付き急に恥ずかしくなった
冥「A、可愛いが過ぎないか？」
『…忘れてください。お願いします。』
心底楽しそうに微笑む冥さん
しばらくネタにされるだろうと後悔しながら
また街の風景に視線を落とす
1度部屋に戻った冥さんだが何か思い出したように引き返してきた
冥「A、五条がこっちに向かってるよ。もう２、３分もすれば着くだろう。」
『…。』
冥「まさか私の家を見つけ出すなんて予想外だった。…で、どうしたい？」
『……今は、会いたくないです。』
冥「…なら、適当に誤魔化して帰ってもらうよ。」
『すいません…。』
気にするな、とAの頭をぽんぽんと撫で
もう一度部屋に帰っていく冥冥
まだ気持ちが消化できていない今は
悟に会うと余計なことをしてしまいそうだから、
彼に出会ってから、彼を避けたくなったのは初めてのことで
自分でもどうすればいいのか分からず少し戸惑う
不思議そうに首をかしげているカラスに少し癒されながら
膝を抱えるように深く椅子に沈み込む
この真っ黒なカラスのように闇の中に飛び込んで
誰にも見つからないよう、
このまま夜に溶け込んでしまいたい
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茉莉 - この作品が好きです。更新、待ってます！ (2020年11月22日 22時) (
レス) id: a68061a5cd (このIDを非表示/違反報告)
Gettion - え…心臓痛くなるくらい好きです。応援しています！ (2020年11月6日 18時) (レス) id: b24edd395c (このIDを非表示/違反報告)
uka8502(プロフ) - 更新停止ですか??ホントに面白すぎてハマりました！一気に見ました!!更新ホントにお願いしますっ！ (2020年10月19日 1時) (レス) id: 7913de20e0 (このIDを非表示/違反報告)
AiRIN(プロフ) - いつも楽しく拝見しています！正直、縞さんの作品ならどれも大歓迎ですが、しにたがり姫か好きなので、続編を待ってます！ (2020年5月17日 13時) (レス) id: 931e2c7403 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：縞 | 作成日時：2020年4月3日 2時
