知らない顔3 ページ14
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入るなり中を物色しては
随分と趣味が変わったわね、と肩を落とす女性
あまり絡まれたくないと距離を取りながら
雲行きが怪しくなってきたため
少し早めに洗濯物を取り込み中へ戻ると
ソファに座り携帯を弄っていた
視線だけ一瞬こちらに向けると大きくため息をついて
白く長い足を組みもう一度冷たい視線が向けられる
「気が利かない子ね。察しなさいよ。」
『…?』
紅茶かコーヒーでも出すべきだったのか、
意味が分からずしばらく考えていると女性が立ち上がり
頭を掴まれ顔を寄せられる
怒ってはいるが近くで見れば綺麗な女性だ
大きな瞳に通った鼻筋
テレビに出てくる女優さん達にも劣らない美貌
しかし引っ張られた髪と食い込んだ爪が痛い
「鈍いわね。どうして私があなたと悟の帰りを待たないといけないの?あなたが居たら私も悟も楽しめないじゃない。それとも邪魔したくてわざわざここにいるのかしら。」
『…。』
「早く出ていって。今夜はお友達の家にでも泊まりなさい。ああ、行く当てがないなら紹介してあげましょうか?無垢な若い子なら大歓迎の大人は案外大勢いるの。忌み子でも一般人なら関係ないわよ。」
不機嫌に歪んでいた顔が
随分と気分が晴れたように笑っている
ここ最近は忘れていた大人の欲の不快さが体を巡る
ああ、そういうことか、
悟に嫌悪感を感じたわけではない
彼女の言葉だけで彼を信じられなくなるわけでもない
例え事実でも、嘘でも、
変わらず悟は自分にとって何より大切であることに変わりない
むしろ今まで女性の影がなかったことの方が不自然で
本当はずっと私に気を使ってくれていたのかもしれない
あの人のたくさんの優しさを、
自分一人が独占しているなんて自惚れが過ぎる
なにを期待していたのだろう
ふいに自分が世間知らずの馬鹿な子どもで、ひどく情けなく思えてきた
女性の言葉が、これから起こることが、
胸を引っ掻きながらも
頭では不自然なほど納得し、すとんと落ちていった
頭を掴んでいた手は離され再びソファに座り足を組む女性
早くここから出ていきたい気持ちを抑えながら
何とか洗濯物だけは片付け
鞄を肩にかけて逃げるように部屋を出た
良い子ね、と後ろで手を振る女性には気付かないふりをして
今はただ、とにかく早くここから離れたかった
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茉莉 - この作品が好きです。更新、待ってます! (2020年11月22日 22時) (レス) id: a68061a5cd (このIDを非表示/違反報告)
Gettion - え…心臓痛くなるくらい好きです。応援しています! (2020年11月6日 18時) (レス) id: b24edd395c (このIDを非表示/違反報告)
uka8502(プロフ) - 更新停止ですか??ホントに面白すぎてハマりました!一気に見ました!!更新ホントにお願いしますっ! (2020年10月19日 1時) (レス) id: 7913de20e0 (このIDを非表示/違反報告)
AiRIN(プロフ) - いつも楽しく拝見しています!正直、縞さんの作品ならどれも大歓迎ですが、しにたがり姫か好きなので、続編を待ってます! (2020年5月17日 13時) (レス) id: 931e2c7403 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:縞 | 作成日時:2020年4月3日 2時