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翔
タイミングは案外すぐにやってきた。
計画を考えてから一週間ほどたった日曜日のことだった。
いつ来てもいいように遺書は次の日に書いてしまったので何の問題もない。
皆がお休みの今日、智君が夕食の買い物をすっかり忘れてしまった。普段料理担当の潤ではなく珍しく兄が担当しようとしていたのだが、久しぶりのことで抜けてしまったらしい。
ハンバーグを作らせたい和とここら辺のスーパー事情に一番詳しい潤、ただただ外出についていきたいだけの雅紀とお財布担当の俺。……お財布。
まさに想定していたシチュエーション。
問題は恐らく双子が雅紀に寄ってくる霊を追い払ってるみたいだということ。うーん、タイミングを待つしかないか。
しばらくスーパーへの道を歩いていると段々と和と潤の顔が険しくなってきた。
もしかして結構厳しいのかな。時折「翔さんがいるときに限って…。」とか聞こえてくるし。
チャンス…あるかも。
そんな最低なことを考えた瞬間だった。
雅紀の体がぐっと二つに折れた。
しまったという顔をして雅紀に近寄る双子。
しばらく雅紀と目を合わせたり、揺さぶったりしていたが徐々に焦った声へと変わっていく。
和「まずいですね…。今回の霊は性別が無いみたい。」
潤「こっちを気に入ってくれれば良かったんだけど、そうもいかないな…。しかもなかなか面倒そうなのに憑依されたな。」
…今こそ役に立てるのでは?
俺の目的も達成できるし一石二鳥だ。
翔「和、潤!少しだけどいて。声掛けは俺がやる。本で声の掛け方は知ってるから安心して。」
和「でも!それじゃあ翔さんが‼︎」
俺は安心させるように兄らしい微笑みを浮かべる。
翔「大丈夫。俺は雅紀の兄貴だからな。」
二人が言葉に詰まったのを横目に雅紀のそばに近寄る。
本に書いてある通りに。
何かに耐えるように自分の体を抱えてて震える雅紀をそっと抱きしめる。
そのまま耳に落とし込むようにゆっくりと言葉を呟いていく。
翔「ゆっくり俺に合わせて息をして……そう上手だ。いくつか質問するよ。」
焦点が合わなくなり始めた雅紀の顔を無理矢理こちらに向ける。
翔「今日は何しにきたんだっけ?」
雅「あ…う…買い…もの…?」
翔「そう買い物だ。誰のお願いで買い物に来たんだっけ?」
雅「さと…ちゃん…?」
翔「うん、俺らのお兄ちゃんの智君だね。一緒に来たのは?」
雅「か…ずとじゅん…としょうちゃん。」
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とうこ(プロフ) - いつも楽しく拝読させて頂いています!4か、5か…の間?のような感じで、4人でSさんの力を小さくし、小鬼?くらいの能力に抑えながら、永く同じ時間を過ごしていく…みたいな感じもどうかな?と思いました。どんな結末になるか楽しみにしています! (2021年12月19日 19時) (レス) @page49 id: d6b414cbbc (このIDを非表示/違反報告)
花序(プロフ) - はじめまして。いつもひっそり楽しく読ませていただいております!わたしは5を希望します。先に寿命を迎える事は悲しい事ですが翔くんの心が4人によって浄化されたらいいなと思います。そしていつかまた何らかのカタチで再会できたら幸せですね。 (2021年12月18日 20時) (レス) @page49 id: 9d25e37658 (このIDを非表示/違反報告)
まさきっち - 私は4を希望します (2021年12月16日 12時) (レス) @page49 id: 61f762c73c (このIDを非表示/違反報告)
翠奈 - 4です。でも、いつかまたあおうねってかんじでおわかれがいいです。できれば、1年後とかに4人の能カも消えて、翔くんもふつうになって5人でくらすっていうかんじがいいです。色々すみません!! (2021年12月15日 18時) (レス) @page49 id: 87c0cb4545 (このIDを非表示/違反報告)
夏音(プロフ) - 4 なのですが、数十年後に4人の前に生まれ変わった幼い翔くんと出逢い5人で暮らすとか。ほんのりアンハッピーじゃなくなるといいなぁ。 (2021年12月15日 18時) (レス) @page49 id: 4a8a281850 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:陽方向 | 作成日時:2021年11月1日 11時