大学時代のお話。 ページ4
大学の図書館で会った男は今まで出会った人間の中で一番綺麗だった。
本を真剣に読んでいるその横顔に周りの人間が見惚れてまっているのも頷ける。
男の俺でもそう思うのだ。
女性達が放っておくわけもなく、
「あの、どこの学科ですか...？」
本を読み終えたらしい彼が立ち上がったとき、二人の女子が話しかけた。
メイクを施し、髪を巻いて、なかなか派手な服を着た二人だ。
図書館の雰囲気には似つかわしくないが、それは偏見というものだろうか。
「....心理学ですが。」
耳障りの良い、低く甘いバリトンボイスは男の魅力をさらに上げる。
「そうなんですね！私達は...」
「あの。」
「何ですか！？」
「....ここは図書館なので、静かにしていただけませんかね？」
男の声は驚くほど冷たいものだった。
その氷のような冷たい声に二人の女子はびくっと体を震わせる。
「貴女達の目的は本を読むことでも、借りることでもないでしょう。
迷惑なんですよ？」
「へ、あ、ご、ごめんなさい...」
「れ〜い〜？」
今度は明るいテノールボイスが聴こえた。
柔らかい雰囲気の...顔はとても幼いが、大学生だろう。
「...律。」
「お前はまた時間も忘れて本読みふけってたんか？
こっちはずーっと待っとったのに...。」
律、と呼ばれた男は頬を膨らませた。
男が頬を膨らませる仕草など気持ち悪い以外にないはずのに、何故か似合っていた。
れい、と呼ばれたその男の冷たい雰囲気を一気に柔らかくした律という大学生は一体何者なのだろうか。
「悪い悪い。ケーキ買ってやるから。」
「思うてへんやろ...。....まあ、ええわ。チョコレートな？」
「はいはい。」
続く
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