安心してええよ。 ページ10
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｢…ちゃんと、やろうとしたんやろ？
ちゃんとしようとしたことを、雨宮が自ら挑戦したことを、咎める奴なんておらんよ｣
嗚呼。
正論パンチは、どこにいったんですか。
いつもみたく、正論パンチで、現実を見せてくださいよ。ねえ、北先輩。
私、だって、許されないこと、したんですよ？
ねえ、北先輩。
なんで、そんなに。
だって、私、だって。
｢安心せえ。お前は、充分頑張った。…えらかったなあ｣
目を細める北先輩が、あまりに、温かくて。あまりに、優しくて。
だって、でも。
｢でも、私は…！結果的に、ハルから逃げたんですよ！？なのに、なんで…！｣
｢結果なんて｣
私の言葉を制止するかのように、重ねられた、北先輩の言葉。その言葉は今までと打って変わってどこか冷たくて、一瞬、物怖じしてしまった。
嗚呼、この感覚。
試合中の北先輩を、演奏しながら見たときと似ている。
｢結果なんて、只の副産物や。お前がどれだけちゃんとしようとして、どれだけのことをやれたか。ハルと向き合おうとした時点で、お前は充分成長出来とる｣
副産物。
北先輩、あなたは、どうしてそんなにも強い。どうして、私に笑いかけてくれる。
嗚呼、でもだめだ。北先輩が笑いかけてくれることに、安心している自分がいるから。
止まっていた涙が、また一気に流れ出す。一粒目が溢れてしまえば、もう止まらない。
｢…はは、結局泣くんか、お前は｣
耳朶に触れていた手が、私の溢れんばかりの涙を掬う。濡れてしまいますよ、と掠れた声で言えば、別にええよ、と笑われた。
嗚呼、なんだろう、でも。
先程の涙とは違う。安心感が、自然と蛇口をひねった感覚。
ホースを切ったんじゃなく、蛇口を丁寧に開いてもらった、そんな感じ。
｢…なんで、そんなに、優しいんですか｣
無駄な質問だったと思う。自分でもよく分かっていた。だからこそ、知りたかった。北先輩の、腹の奥底から滲み出る優しさの正体を、知りたかった。
｢捌け口になるって、言うたやろ？｣
有言実行とはまさにこのこと。お前が辛いときは、いつでも支えたるよ、と笑う北先輩に、もっと早くから頼れば良かったのかもしれない。
でも、私はそれをしなかった。
でも、北先輩は今でも守ってくれている。
捌け口になる、という言葉を。どこか自己犠牲にも聞こえる、その言葉を。
また溢れ出た涙に、北先輩が、笑って。
それを、そっと指先で掬った。
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はるか(プロフ) - この作品のことではないんですがブスの愛で方はもう公開されないんでしょうか？ (2023年2月25日 13時) (
レス) id: aa3e2fb3e0 (このIDを非表示/違反報告)
サラミ - なんかもう…本当に胸が痛かったです…なんでそんなに感動する文章かけるの…？という感じでした。辛いし、気持ちが凄くわかるし、頭がうああってなって(語彙力)気づいたら大号泣していました。本当に素敵なお話をありがとうございました。 (2023年1月18日 22時) (レス) @page50 id: 82adb6822c (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - 北さんもいい……！ めちゃくちゃにやけました！ (2022年10月23日 0時) (レス) @page50 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
お布団 - 何回ワシをにやけさせんねん！！ (2021年11月28日 10時) (レス) @page50 id: e77bb3532f (このIDを非表示/違反報告)
リンネ(プロフ) - 私、恋愛をした事なくて恋愛小説をどこか違う世界のものとして読んでました。でもこの小説は、感情移入してしまって雨宮の｢自分が嫌い｣という感情が私と重なって泣いてしまいました。あなたの言葉で救われた気がします。ありがとうございます。 (2021年7月5日 2時) (レス) id: 2b6f27f6e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お水。
| 作成日時：2019年8月16日 11時
