明日は何の日。 ページ9
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｢…何があったんや、雨宮｣
泣き疲れて落ち着いた私に、北先輩が問う。その重々しげな顔に、思わず息を呑む。
嗚呼、きっと言ったら幻滅される。でも、言わなかったらそれこそ本当に最低野郎だ。
心臓が麻痺しそうなほど、震えたのが分かる。
喉元が疼く。息が漏れる。視界が揺らぐ。
どうにも先程のハルへの八つ当たりは、私の中でかなり根を張っているようだった。
いつの間にか震えていた私の手を、北先輩が、ギュッと握り締める。
…嗚呼。
｢ハルのことを、吹っ切ろうとしたんです。向き合おうとしたんです。…でも、自分のことだけ吐いて、言いたいことだけ言って、苦しくて、ハルを傷付けて、逃げてきてしまったんです｣
大丈夫と、その目が語っているから。どれだけ、私が安心できるか。ねえ、北先輩。
あなたはよく、試合で自分を凌ぎ役だと言うけど。あなたの行動がどれだけ安心感を与えるか。
応援する吹部としても、誇らしいほどに。
さあ、何と言われる？
貶される？蔑まれる？上等。私は、それだけのことをしてしまった。誰だって、好きな人を傷付けられたら悔しいでしょ？嫌でしょ？
憎むでしょ？
｢…ほうか。お疲れさん｣
――呼吸が、止まるかと思った。
あまりに穏やかに微笑む北先輩の顔が、綺麗なんて言葉じゃ言い表せないほどに、儚かったから。
ふわりと、頭に乗る温もり。
どうやらそれは手のひらのようで、一度私の頭を撫でたかと思えば、そのまま、私の耳朶に触れた。
｢…よう、頑張ったなあ｣
心の中で、何かが、はまった気がした。
ビー玉が、割れずに、瓶の中に入るように。音も無く、かと言って静かすぎる訳でもなく。
ふにゃり、なんて効果音がよく似合う笑顔が、目の前にあって。
あまりに誇らしげに、自慢げに言われた言葉を心の中で復唱する。
嗚呼、頑張った？違う、頑張ろうとすら、しなかったかもしれない。お疲れさん？私は、そうやって言ってもらえるほどのことをしたわけじゃない。
むしろ、軽蔑されてもおかしくないのに。
なのに。
｢な、んで…だって、北先輩の、好きな人を。傷付けて、きてしまった。泣かせたまま、逃げてきてしまった…！
なのに、なんで…！｣
どうして事実を知っても尚、こうして私の耳朶をさすってくれるんですか。
どうして、私に笑いかけてくれるんですか。
どうして。
私が最も欲した言葉を、そう簡単に、かけて、くれるんですか。
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はるか(プロフ) - この作品のことではないんですがブスの愛で方はもう公開されないんでしょうか？ (2023年2月25日 13時) (
レス) id: aa3e2fb3e0 (このIDを非表示/違反報告)
サラミ - なんかもう…本当に胸が痛かったです…なんでそんなに感動する文章かけるの…？という感じでした。辛いし、気持ちが凄くわかるし、頭がうああってなって(語彙力)気づいたら大号泣していました。本当に素敵なお話をありがとうございました。 (2023年1月18日 22時) (レス) @page50 id: 82adb6822c (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - 北さんもいい……！ めちゃくちゃにやけました！ (2022年10月23日 0時) (レス) @page50 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
お布団 - 何回ワシをにやけさせんねん！！ (2021年11月28日 10時) (レス) @page50 id: e77bb3532f (このIDを非表示/違反報告)
リンネ(プロフ) - 私、恋愛をした事なくて恋愛小説をどこか違う世界のものとして読んでました。でもこの小説は、感情移入してしまって雨宮の｢自分が嫌い｣という感情が私と重なって泣いてしまいました。あなたの言葉で救われた気がします。ありがとうございます。 (2021年7月5日 2時) (レス) id: 2b6f27f6e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お水。
| 作成日時：2019年8月16日 11時
