銀島結。 ページ8
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銀島side
出すはずやった書類を職員室まで届け、教室にしてきたはずの忘れ物を確認しに行く。
当然ながら、誰もおらん廊下。こんだけ静かなんも不思議やな、と、どこか寒気がした。
"……なあ！"
息が、止まる。
足を、止める。
聞き覚えのある声が聞こえた気がした。俺が好きな、あの声が。教室の方から、確かに、あの声が聞こえた気がした。
止めていた足を、少しずつ、動かす。嗚呼、なんや、この違和感。教室に行かなあかん、みたいな義務感。
なんや、これ。
半ば引っ張られるように足を進め、少し駆け足になる。嗚呼、あとちょいで、教室。
不思議な心地やった。現実的とは程遠い。
…途端。
左から、黒い影が見えて。
｢った…！｣
｢う、わ｣
誰かと、ぶつかる。
嗚呼、そか、ここ、中央階段の真ん前。ぶつかって足がよろけて、すぐ分かる。見覚えどころやない。試合でも部活でも、何回でも見飽きとるくらいに顔を合わせる、同級生。
角名倫太郎が、泣きそうな面をして、そこに立っとった。
｢え、角名？｣
｢あ…銀｣
目が合って、初めて気付いたみたいな顔をしとる角名は、どうにも様子がおかしかった。どうにも気になってもうて、鞄を背負う角名を見つめる。なんや、なんでこんなおかしいねん、こいつ。
｢…なんかあったんか｣
その問いに、角名が答えることは無うて。困ったように、眉を下げるだけやった。言い難い事情があることを察して溜息をつく。嗚呼、なんでこうも俺のチームメイトは溜め込みやすい。
｢…まあ、言いとうないんやったら別にええ。帰るんやろ？一緒に帰らんか｣
｢え、銀は？何か事情があって残ったんでしょ｣
その言葉に、自分が教室に向かっとった目的を思い出す。そうや、忘れ物。
｢嗚呼、そうや。ほら、数学のノート。明日やなかったっけ、提出｣
｢…俺ら同じクラスじゃないでしょ｣
｢担当一緒やろ。提出日同じやんか、いつも｣
今度は角名が溜息を吐いて、自分の鞄を探る。角名が取り出したんは数学のノート。パラパラと捲って、なんや、付箋が貼っとるページを開く。
｢…あー、明日じゃない。来週だよ｣
マジか。一言零して、じゃあええな、取りにいかんでも。と、自己解決する。
でも、なんやろな。この、取りに行かなあかん感じ。教室で、誰かが。
……誰か？
｢銀？｣
｢あ、いや。ほな、帰ろか｣
得体の知れん義務感を放ったまま、俺は角名と歩き出した。
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はるか(プロフ) - この作品のことではないんですがブスの愛で方はもう公開されないんでしょうか？ (2023年2月25日 13時) (
レス) id: aa3e2fb3e0 (このIDを非表示/違反報告)
サラミ - なんかもう…本当に胸が痛かったです…なんでそんなに感動する文章かけるの…？という感じでした。辛いし、気持ちが凄くわかるし、頭がうああってなって(語彙力)気づいたら大号泣していました。本当に素敵なお話をありがとうございました。 (2023年1月18日 22時) (レス) @page50 id: 82adb6822c (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - 北さんもいい……！ めちゃくちゃにやけました！ (2022年10月23日 0時) (レス) @page50 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
お布団 - 何回ワシをにやけさせんねん！！ (2021年11月28日 10時) (レス) @page50 id: e77bb3532f (このIDを非表示/違反報告)
リンネ(プロフ) - 私、恋愛をした事なくて恋愛小説をどこか違う世界のものとして読んでました。でもこの小説は、感情移入してしまって雨宮の｢自分が嫌い｣という感情が私と重なって泣いてしまいました。あなたの言葉で救われた気がします。ありがとうございます。 (2021年7月5日 2時) (レス) id: 2b6f27f6e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お水。
| 作成日時：2019年8月16日 11時
