焦り。 ページ45
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｢…ねえ、銀島｣
｢なんや？｣
休み時間。
どこかまだぼんやりとした意識を抱えたまま銀島の名を呼ぶ。
｢…北先輩って、卒業するのかな｣
まだ、実感が。
いや、事実は知ったんだ。ようやくその事実は知ったけど。でも。
一緒に頑張ろうと言ってくれた人が、目の前からいなくなることを。
想像が出来なかった。
｢…当たり前やろ、三年なんやから。あの人は留年なんてせえへんしな。なんや、寂しいんか｣
『寂しい』
…。
｢…雨宮？｣
｢…寂しい、のかな｣
｢それは、雨宮にしか分からんのとちゃうか｣
そりゃそうだ。私の感情は私にか分からない。当たり前でしょ、何言ってんの。
いや、私が何言ってんの。
｢寂しいって、なんで？｣
｢は？｣
｢銀島は、寂しいと思う？｣
｢…そらそうやろ。先輩が卒業してまうんや｣
違う。
いや、多分銀島のはそうなんだと思う。でも、違う。私は違うんだよ。
なんだろう。
『先輩』だから寂しいんじゃない。違う、私の場合、そういうことじゃなくて。でも、答えは見つからなくて。
｢…あー！ダメだ、グチャグチャして意味分かんない｣
心のどこかにポッカリと穴が空いた。何を入れても埋まらない穴が空いてしまった。その正体が何だか分からないままで。
もやもやして、グチャグチャになって。
どろんと溶けては、垂れていく。
｢…なあ、雨宮。もしかして、｣
｢何？｣
｢あー…いや、なんでもあらへん｣
困ったように笑った銀島に、それ以上は聞けなくて。その、なんでもあらへん、の部分が知りたかったのに。
｢雨宮｣
耳に入る、侑の声。振り向けば、侑がドアの方を指さして立っていた。
｢赤木さんが、雨宮を呼んどる｣
見れば、男バレでリベロを務める赤木さんが笑顔で立っていて。
でも私と赤木さんなんて前に一度会ったことがあるくらいだし。それよりハルの方が関わりがあるはずで。
どうして、私を。
それが、先に頭に浮かんだ。
｢…分かった。ありがと｣
一先ず侑に礼を言って、ドアの方へと駆けていく。どこか銀島やハルに似ている笑い方をする赤木さんが、私よりも先に、私に声をかける。
｢すまんな、態々呼び立ててしもた｣
｢あ、いえ。大丈夫ですけど。何かあったんですか？赤木さんが私を呼ぶなんて…珍しいですね｣
｢まあ、ほとんどないからなあ。ちょっと、雨宮に話ときたいこと、あんねん｣
高らかに笑う。
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はるか(プロフ) - この作品のことではないんですがブスの愛で方はもう公開されないんでしょうか？ (2023年2月25日 13時) (
レス) id: aa3e2fb3e0 (このIDを非表示/違反報告)
サラミ - なんかもう…本当に胸が痛かったです…なんでそんなに感動する文章かけるの…？という感じでした。辛いし、気持ちが凄くわかるし、頭がうああってなって(語彙力)気づいたら大号泣していました。本当に素敵なお話をありがとうございました。 (2023年1月18日 22時) (レス) @page50 id: 82adb6822c (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - 北さんもいい……！ めちゃくちゃにやけました！ (2022年10月23日 0時) (レス) @page50 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
お布団 - 何回ワシをにやけさせんねん！！ (2021年11月28日 10時) (レス) @page50 id: e77bb3532f (このIDを非表示/違反報告)
リンネ(プロフ) - 私、恋愛をした事なくて恋愛小説をどこか違う世界のものとして読んでました。でもこの小説は、感情移入してしまって雨宮の｢自分が嫌い｣という感情が私と重なって泣いてしまいました。あなたの言葉で救われた気がします。ありがとうございます。 (2021年7月5日 2時) (レス) id: 2b6f27f6e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お水。
| 作成日時：2019年8月16日 11時
