そういえば。 ページ44
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｢A！おはようさん！｣
ハルが、私に笑いかける。
今までと何ら変わらないそれが、私には充分嬉しかった。
今日は、三月一日。
あれからかなり月日が経ったように思える。吹奏楽部は、まさかの新人戦地区大会ダメ金。誰が予想したか。吹奏楽の強豪は、地区大会で金賞をとっても代表を勝ち取れなかった。
私の後輩が悔しそうに下唇を噛んでいるのを見た。
｢すみません…ソロ、全然上手く吹けんかった｣
悔しそうに泣く後輩の頭を、撫でてあげられたら良かったんだと思う。でも、私はそんなに出来た先輩じゃないから。
肩に手を置いて、
｢…全力で楽しめた？｣
なんて、惨い質問を投げかけるしか出来なかった。
｢…いいえ、楽しめませんでした。緊張で、何もかも吹っ飛びました。上手く吹かなあかんとしか思えんかった。今まで練習で身につけたこと、全部ぶっ飛んで。
下手な演奏しか、出来んかったです…！｣
そう言って更に泣く後輩に、何を言えるでもなく。ただ、私の代わりにソロを吹いて、私よりも上手いから私を抜かしてコンクールに出た後輩を。
そっと、抱きしめるしか出来なかったんだ。
吹部の応援を引き連れ、全国に臨んだ男子バレー部は二回戦…シード校だから実質初戦敗退となった。
誰が見ても良い試合だった。
それでも負けてしまったバレー部を見て。
応援しか出来なかった私達は、拍手しか送れなかったけど。
北先輩の顔が、あまりにもスッキリしていたから。
どこか、頭の端から抜け落ちていたんだ。
｢三年の卒業式に参加する生徒は放課後残ること。場所は後で指定する｣
先生が告げた言葉に何の実感も湧かない。
卒業式。
誰の？
…嗚呼。
三年生のか。吹部の先輩、元気かな。顔出してくれる先輩と出さない先輩がいるし、何か渡した方が良いよね、色紙とか。
…っていうか、あれ？
三年生ってことは、さ。
｢北さん達ももう卒業やな｣
席替えして隣になった銀島が、呟くように私に言うから。
｢…うん｣
頷くしか、出来なかった。
何も考えてすらいなかったんだ。先輩達が、卒業すること。
進学して、上京する人もいるということ。
私が、三年になる。
先輩方は、大学一年になる。
一年の差なんて、ちっぽけだと思っていたんだ。
今ようやく、私は少しの焦りと共に、ある事実を悟る。
嗚呼、このままだと。
北先輩に、会えなくなる。
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はるか(プロフ) - この作品のことではないんですがブスの愛で方はもう公開されないんでしょうか？ (2023年2月25日 13時) (
レス) id: aa3e2fb3e0 (このIDを非表示/違反報告)
サラミ - なんかもう…本当に胸が痛かったです…なんでそんなに感動する文章かけるの…？という感じでした。辛いし、気持ちが凄くわかるし、頭がうああってなって(語彙力)気づいたら大号泣していました。本当に素敵なお話をありがとうございました。 (2023年1月18日 22時) (レス) @page50 id: 82adb6822c (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - 北さんもいい……！ めちゃくちゃにやけました！ (2022年10月23日 0時) (レス) @page50 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
お布団 - 何回ワシをにやけさせんねん！！ (2021年11月28日 10時) (レス) @page50 id: e77bb3532f (このIDを非表示/違反報告)
リンネ(プロフ) - 私、恋愛をした事なくて恋愛小説をどこか違う世界のものとして読んでました。でもこの小説は、感情移入してしまって雨宮の｢自分が嫌い｣という感情が私と重なって泣いてしまいました。あなたの言葉で救われた気がします。ありがとうございます。 (2021年7月5日 2時) (レス) id: 2b6f27f6e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お水。
| 作成日時：2019年8月16日 11時
