裏。 ページ20
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北side
｢…俺も、ハルを重ねてまうんや｣
これを言えば、絶対に雨宮はこの提案にのってくると思うた。雨宮はそういう奴やから。
きっと今日俺と角名を重ねたことに対しての罪悪感と、俺のハルへの感情を察して提案を飲んでくれるだろうと。
｢北先輩を、助けるための提案でもあるんですか｣
嗚呼、ほら。
お前は、どこまでも優しいもんやから。
自分で自分の首を、絞めてまうんや。
歪んだ提案だ、なんで重々承知。俺もまさか自分がこないな提案するなんて思いもせんかった。でも。
浮かんでしもたんはしゃあないやろ。少しでも、雨宮の負担を減らしたい。そう思う傍らで。
少しでも、俺の中のハルの存在をなくして欲しい。
という思いが密かに湧きたっていた。
いつの間にか、ハルに彼氏が出来た。
いつの間にか、ハルと侑は上手くいかんようになっとった。
いつの間にか、それを喜んどる俺がいた。
怖いんや。
これ以上、人の不幸を喜ぶ自分が増えることが。
只管、とにかく怖いんや。
さっきも、侑とハルが一緒におるのを見て、嗚呼、結局ハルを慰めるのは侑なんやと。
どこかで溢れかけていた期待は、儚く零れて。
俺の中のハルへの好意は。
もういっそ諦めた方が楽なんやないかと思うとった、ハルへの好意は。更に重みを増し、俺の心臓に鎖を巻いてぶら下がる。
そして、俺の首に縄をかけ。後ろから引っ張られて、前に進むことすら出来やしない。
角名はハルにフラれて。
銀はハルを諦めようとしとるらしくて。
治は、吹っ切ることを決断して。
侑は今もどこかで、ハルとおる。
俺だけ、何も無い。
俺だけ、何もしとらん。
俺だけや。
前に進んどらんのは、俺だけ。
未だにハルに夢を見とる。
ハルが隣で笑ってくれるのを、心のどこかで望んどる。
俺はこのまま、前にすら進めずに、後ろに縋って過ごすのか？
俺は、俺だけは、楽になれへんの？
俺は、なして、楽になろうとすらせんの？
いつの間にか、同じ人を追いかけとった奴等は靴を履いて、俺はまだ靴すら見つかっとらん。いつの間にか、彼奴らは自分の進むべき道を逞しく歩いとって、俺はまだ方角すら危うい。
…楽ニナリタイ。
その感情が、縋るだけの、逃げるだけのその感情が。
普段の俺なら、そんなのあかんやろ、で払い除けられるその感情が。
あまりに、俺の奥深くで根を張るから。
｢…頼む｣
何も、何も、考えられん。
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はるか(プロフ) - この作品のことではないんですがブスの愛で方はもう公開されないんでしょうか？ (2023年2月25日 13時) (
レス) id: aa3e2fb3e0 (このIDを非表示/違反報告)
サラミ - なんかもう…本当に胸が痛かったです…なんでそんなに感動する文章かけるの…？という感じでした。辛いし、気持ちが凄くわかるし、頭がうああってなって(語彙力)気づいたら大号泣していました。本当に素敵なお話をありがとうございました。 (2023年1月18日 22時) (レス) @page50 id: 82adb6822c (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - 北さんもいい……！ めちゃくちゃにやけました！ (2022年10月23日 0時) (レス) @page50 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
お布団 - 何回ワシをにやけさせんねん！！ (2021年11月28日 10時) (レス) @page50 id: e77bb3532f (このIDを非表示/違反報告)
リンネ(プロフ) - 私、恋愛をした事なくて恋愛小説をどこか違う世界のものとして読んでました。でもこの小説は、感情移入してしまって雨宮の｢自分が嫌い｣という感情が私と重なって泣いてしまいました。あなたの言葉で救われた気がします。ありがとうございます。 (2021年7月5日 2時) (レス) id: 2b6f27f6e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お水。
| 作成日時：2019年8月16日 11時
