暗殺者執事 〔 Ｈ×Ｈ 〕

暗殺者執事の恋心 ページ22

『でも私、ここに来て学んだんです」


「何を？」


『タダじゃやられないっていう心意気を』


「ミルの暗殺も出来ないのに俺を殺す気？ １００％無理」


『殺すんじゃないですよ。 強引に奪うんです。

イルミさんの温もりと死ぬ前の最後のキスを』



その時を想像しているのか幸せそうな顔。



『イルミさんを心から抱きしめて

イルミさんの心まで抱きしめて…

人生最後のキスを…イルミさんから

何度も奪ってやるんですから』


「…俺のキスは５億じゃ済まない」


『キスしたからって死亡掛け金の５億から清算するのは契約違反ですよ。

私が勝手に奪うんですからお金払も払いませんし、謝りもしませんよ』



死ぬ直前に、俺とキスしたい？

何故Aはそう思ってくれてる？



「それって…Aは俺の事を好きだって解釈しちゃうよ？」


『さあ、それはどうでしょう。 憎くて呪いのおまじないかも知れないですよ？』


「うわあ…怖いなー」


「ちっとも怖がってない癖に…イルミさんは意地悪ですねえ」



痛み止めが切れてきたのか時々顔を歪め、顔は熱のせいで赤いA。



「意地悪だし意地汚いよ。 だってAが眠ってる時に俺は何度もAにキスする位だし」


『……〜ッ!!! 何してんですかー!!!』


「しょうがなくない？ 眠ってるAも可愛かったし、熱を測らなきゃだし」


『体温計っていう現代文化に存在する医療器具使って下さいよ!!』


「えー…体感で感知するのも暗殺者に必要な技術なのに」


『発熱は関係無いですよね!?』


「バレた？」



もう…と頬を膨らますA。



「Aはさ、朝に母さんが言った事、何とも思わないの？」


『…何の事ですか』


「分かってる癖にAも嘘つきだね。 ゾルディックに相応しい相手が、って言ってたやつ」


『その通りなのでは？ 歴代ゾルディックの人達がどんな人と結婚したか知りませんけど。

普通の人間じゃ勤まらないでしょうね。 全てが違い過ぎるって…私ももう痛感しました』


「じゃあ何で死ぬ前にキスするの？」


『思い残す事があったら死に切れないじゃないですか』


「なら死ぬ前に沢山しておけばいい」


『それは逆です。 想いが積もって死に切れません』





失恋したと気付く前に

この人とは結ばれないと理解する前に

ありったけの好きを伝えられればいい





それがAなりのイルミへの愛。

どんなに醜い世界でも

花に付く朝露の様に

一筋の光の様に

力強い心。


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