まっ赤な薔薇・2 ページ32
花瓶ひとつ分の薔薇を密閉容器に詰めて、店に向かう。
今日も贈られるはずのまっ赤な薔薇の花束と太輔の眩しい笑顔を思い浮かべて、背中がむず痒くなった。耐えるように下唇を噛んで、俯きながら店のドアをくぐる。
外で水やりをしていた宮田に
「おはよう」と声をかけると、宮田から明るい挨拶と笑顔が返ってきた。
「おはようございます、横尾さん！見た？昨日」
「…あ、うん。最後の方だけ。用事してたら始まりの時間忘れてて…」
「えーっ！もったいない！藤ヶ谷さん、めちゃくちゃ出番多かったのに！」
大げさにのけぞった宮田が、残念そうに口をへの字にする。なぜかそれに罪悪感を覚えて、うっと声が漏れてしまった。
「っ。今日見る。一応、録画してるから…」
「なるほどー。あっ、そう言えば朝イチでオーダーメール入ってたよ。藤ヶ谷さんから！」
「メール？」
「赤い薔薇を十二本使った花束をひとつ。今日は仕事で買いに行けないからメールで注文させて下さいだって」
「え…」
電話で注文？
今日は、買いに来ないのか？
いつもと全く違う展開に戸惑うオレの目の前に、まっ赤な薔薇の花束が差し出される。
「はい、どうぞ。藤ヶ谷さんからのプレゼントです」
まっ赤な薔薇が、十二本。
ピンクのペーパーに、白のリボン。
色もサイズも、オレがいつももらってるものとそっくりだ。
「藤ヶ谷さんが『渉の好きな雰囲気で』って言うから、いつも横尾さんが作る花束に似せてみたけど、大丈夫だった？」
受け取った花束は、濃密な香りを放って鼻腔を刺激してきた。気を失うような強いめまいを覚えて、爪先にぎゅっと力を込める。
太輔が、今日は、来ない。
(毎日毎日、欠けた日なんか、今まで一日もなかったのに)
抱えた花束がずしっと重くなった気がした。
胸の中で、灰色の雲がもわもわと増えはじめる。
いや、途絶えたわけじゃないんだ。
ただ、買いに来られないだけ。
(…でも)
ドラマが放送された翌日に途切れた、花束のプレゼント。太輔の訪問。
(偶然だ)
きっとそう。太輔はそんな性格じゃないはず。友達付き合いをしてきた中で、わかってる。
太輔がオレに惚れた理由はまだ半分信じられないけど、でも、好かれてる事自体を疑ってはいない。…たぶん。
「…たまたまだ」
その言葉は、まるで自分自身に言い聞かせてるようだった。
そんな自分自身に、胸の奥がじゅくりと不快な音をたてた。
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風華(プロフ) - ソフィアさん» 二人のお話を見届けてくださり、ありがとうございました。コメントもありがとうございます(*´▽｀*) お互いの求めるものや背負った傷の違いが成り立たせる二人の関係を、少しでも描くことができていたら嬉しいです(^-^) (2021年5月10日 12時) (
レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - なかのさん» 最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございます！更新は不定期ですが、作品の執筆自体は続けていくつもりですので、また見つけてくださった際は是非よろしくお願いします(*´人｀*) (2021年5月10日 12時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
ソフィア(プロフ) - わたちゃんのピンと張り詰めて今にも切れそうなのと、たいちゃんのところどころ擦り切れてやっぱり切れそうな二人の心の糸が寄り添うことで、切れることなくしなやかに輝きを放っていくかのようなお話で素敵でした。ハッピーエンドで良かったです。 (2021年5月9日 21時) (レス) id: 06f6b1f19d (このIDを非表示/違反報告)
なかの(プロフ) - 凄く素晴らしいお話しでした。毎回更新が楽しみで夢中になって読んでいました。また、お話し楽しみにしています。 (2021年5月9日 13時) (レス) id: 3b49c20ebb (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - はしもとさん» コメントありがとうございます！今回の設定、気に入って下さってすごく嬉しいです( ；∀；) 他メンの事にも触れていただいて…yさんとわちゃわちゃお仕事してる風景を想像した時に、この二人が似合うかなあと思いました(。-∀-) いつも本当にありがとうございます♪ (2021年2月26日 23時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：風華
| 作成日時：2021年2月21日 16時
