花屋の日常 ページ1
ポニーテールの小さなお客様から希望の雰囲気と予算を聞いて、花を選んでいく。最後にカスミソウを足して彼女に見せると、不安そうな顔でオレの動きを見ていた顔が、一瞬でぱあっと華やいだ。
「ありがとうございました」
オレが作った花束を大事そうに抱えて歩くお客様の背中を見送りながら、ふふっと笑みが浮かんだ。
お友達のピアノの発表会に行くんだと言っていた彼女。ステージを終えたお友達も、あの花束で華やかな笑顔を浮かべてくれるといいなと思う。
駅から少し離れたところにある、小さな花屋。ここのスタッフとして働きはじめてから、もう三年ほどだ。アルバイトを転々としながら暮らしていたオレが唯一、三年も続いている居心地が良い職場だ。
描いていた理想とはまったく違う進路ではあったし、華やかな見た目とは違って力仕事や地味な作業の多い仕事だけど…でも、花は綺麗だし和むし、お客さんの笑顔やドラマがたくさん見られるのも楽しくて、すごくやりがいのある仕事だと思ってる。
壁にかかった時計をちらりと見ると、午後一時を少し回った頃だった。そろそろ休憩時間だ。
今日は忙しかったから、さっさと食べてゆっくりしよう…と時間を計算していると、店の自動ドアがサーッと開いた。高そうなジャケットを身に纏った美青年が、キラキラのオーラを振り撒きながら入ってくる。
「っ。た、太輔…」
きた！！と心の中で叫ぶ。
やっぱり来た。今日も来た。やっぱり今日も来るんだ。藤ヶ谷 太輔。
いや、分かってた事だけど。
太輔は毎日来る。ヤツは毎日来るんだ、うちに。この半年間ずっと、休むことなく。
これから始まるやり取りを想像して、心と肩がどっと重くなる。そんなオレの前で足を止めた太輔が、オレに向かって爽やかな微笑みを浮かべた。
「こんにちは、渉。今日も綺麗だね」
「…い、いらっしゃいませ…」
「赤い薔薇の花束をください。十二本」
「っ。…はい」
半年前から毎日続くやりとりに少しげんなり、でも微かに乱れる鼓動に下唇を噛みながら、太輔の視線から逃れるように、彼に背を向ける。ショーケースから赤い薔薇を抜き取って、バランスを調整する。
「ええと、こんな感じで…」
「うん、大丈夫。とっても綺麗」
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風華(プロフ) - ソフィアさん» 二人のお話を見届けてくださり、ありがとうございました。コメントもありがとうございます(*´▽｀*) お互いの求めるものや背負った傷の違いが成り立たせる二人の関係を、少しでも描くことができていたら嬉しいです(^-^) (2021年5月10日 12時) (
レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - なかのさん» 最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございます！更新は不定期ですが、作品の執筆自体は続けていくつもりですので、また見つけてくださった際は是非よろしくお願いします(*´人｀*) (2021年5月10日 12時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
ソフィア(プロフ) - わたちゃんのピンと張り詰めて今にも切れそうなのと、たいちゃんのところどころ擦り切れてやっぱり切れそうな二人の心の糸が寄り添うことで、切れることなくしなやかに輝きを放っていくかのようなお話で素敵でした。ハッピーエンドで良かったです。 (2021年5月9日 21時) (レス) id: 06f6b1f19d (このIDを非表示/違反報告)
なかの(プロフ) - 凄く素晴らしいお話しでした。毎回更新が楽しみで夢中になって読んでいました。また、お話し楽しみにしています。 (2021年5月9日 13時) (レス) id: 3b49c20ebb (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - はしもとさん» コメントありがとうございます！今回の設定、気に入って下さってすごく嬉しいです( ；∀；) 他メンの事にも触れていただいて…yさんとわちゃわちゃお仕事してる風景を想像した時に、この二人が似合うかなあと思いました(。-∀-) いつも本当にありがとうございます♪ (2021年2月26日 23時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：風華
| 作成日時：2021年2月21日 16時
