かけがえのない存在 ページ36
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まだ喉がヒリヒリして声も出しにくいしフラフラする中、オレはAに支えられてガッチマンのキャンピングカーに乗り込んだ。レトさんとウッシーはテントを撤収する為、ガッチマンについて行った。
「キヨ、なにか飲む?」
「あー…じゃあ、オレンジジュース貰える?」
「わかった!」
いそいそと車に備え付けの冷蔵庫からジュースを取り出しコップに注ぐと、いつになく優しい笑顔でAはオレにコップを差し出した。
「はい、どうぞ」
「あー、Aの口移しじゃないと飲めないなあー」
「……」
ソファに大きく倒れ込んでいつもの小ネタをぶっ込み、Aに無視されてコップを受け取ろうと体を起こすと、___Aが黙ってオレンジジュースを飲んでいた。…あれ、怒らせた?
「あの、ごめん、冗談!オレにもジュースくださ…」
慌てて謝って手を伸ばしたオレの頬をAは両手で押さえると、そのままキスをしてきた。…え、A…え、え、え?
「んっ…ん」
口の中にオレンジジュースの甘い味が広がる。ゴクリ、と喉を鳴らしてそれを飲み込むと、Aの顔が離れた。驚いた顔で見つめると、恥ずかしくて堪らない、と言った上目遣いでオレを見ていた。…そんな顔されたら、
「ーーもっと、」
オレの要求に一瞬ためらいを見せるも、Aはもう一度ジュースを口に含み、オレの前に屈んだ。それを受け入れるように抱き寄せ、再度口に流れ込んだジュースを飲み込むと、そのままAの口内に侵入する。
ビクッ、と驚いて目を開け体を離そうとするAの頭と背中をしっかりと抱き寄せてキスを続けると、観念したように抵抗をやめてオレのキスに応えた。
「んっ…はあ」
長いキスのあと、体を離して横に座るAを見ると、ピンクに染まった頬と潤んだ瞳でオレを見上げていた。え、A、まさか…
「…やっと、オレの魅力に気づいてくれた?」
Aは俯き、オレの膝の上でオレの右手を両手で握りながら、
「…キヨが死んだ、と思ったとき…初めて気づいたの。私、キヨがいないと生きていけない。気づいたらずっと一緒にいて、空気のように当たり前の存在だったけど…」
オレを見上げたAの頬を、優しく撫でる。…たぶん、オレもAと同じ顔をしてAを見ている。…あなたにベタ惚れって顔で。
「…空気と同じくらい、なくなったら生きていけない存在だって、気づいたの。かけがえのない、大切なーー」
Aの言葉を最後まで待たずに、オレは力いっぱいAを抱きしめた。愛しい愛しい、そのひとを。
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いりや(プロフ) - りんごさん» 素敵な言葉で褒めて頂き有難うございます😊楽しんで頂けて幸いです✨ちゃんと完結しますので気長に更新お待ちいただけたらと思います。ミステリ系がお好きでしたらFriday Nightは完結してますのでよかったらお試しくださいませ🤗 (2022年4月6日 22時) (レス) id: dfbc56e474 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - とても面白かったです!読む手が止まらず1話から最新話まで一気に読んでしまいました。本当にこの作品に出会えて嬉しいです。これからも応援しています! (2022年4月6日 15時) (レス) id: 7d7013c3c7 (このIDを非表示/違反報告)
いりや(プロフ) - でんこさん» うう、嬉しいお言葉ありがとうございます(T-T)!ドキドキきゅんきゅんして頂けたら私も嬉しくてほくそ笑みます!ジェイソンとはまた違うタイプのお話になるとは思いますが、読み続けて頂ければ幸いです^ ^頑張って更新します😊 (2021年10月17日 9時) (レス) id: dfbc56e474 (このIDを非表示/違反報告)
でんこ - いりやさまの書かれるお話大好きです!ジェイソンの時もすっごくドキドキしてキュン要素もあって最高でした。これからもがんばってください!応援してます! (2021年10月17日 1時) (レス) @page8 id: 960c4a624a (このIDを非表示/違反報告)
いりや(プロフ) - chiyuさん» いらっしゃいませ。こちらこそ、心に沁みる素敵なコメントを有難うございます🥰世界観を活かした読み応えのあるお話をお届けできますよう、精進して参ります😊 (2021年10月15日 0時) (レス) id: dfbc56e474 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いりや | 作成日時:2021年10月8日 1時