【七つの大罪】黄昏の歌姫.2

52.聞いてほしいこと ページ7

「あの…私にもウェイトレスの仕事をさせてください。もうケガはなんともありません！」

「…無理だけはすんなよ？」

「はいっ！」


エリザベスの怪我の具合も良くなり、自分も仕事をしたいと言う彼女。そりゃあ、じっとしてるのもなかなか辛いもんね。


「でもエリザベス、調子悪くなったらすぐに言ってね？」

「ええ、Aもありがとう」


メリオダスがエリザベスを心配するように、私もエリザベスが心配なんだから。


「そうだバン、食糧庫は店の裏に回って──…バン？」

「逃げたね…」

「だな。ったく…」


料理番を任されたバンの姿は無く、わずかに開く扉を見てバンが逃げたということを誰もが理解した。
ああ、どうせなら逃げないようにちゃんと見張っておけば良かったなぁ。料理してるとこを見たかったのに。後でも見れるけど。


「そーいやA、最初あれだけバンにビビりまくってたのにさっきはやけにガンガンいってたな？」

「えっ？あ、あー…最初はね、ちょっと怖かったかな。でもいざ話してみるとそうでもなくて、せっかくだからバンとも仲良くなりたいし…！」


これから一緒に旅をするんだから、親交を深めていきたいのだ。
料理を教われば、もっと仲良くなれるよね！と言う私にメリオダスは「ふーん」と微妙な反応。


「Aはとても話しやすいもの。きっと大丈夫よ！」

「え、ほんとに？いいよエリザベス、お世辞なんて…。私なんてビビりで臆病でヘタレてるどうしようもなく暗い女だよ…！」

「えっ？そ、そんな…何言ってるの？あなたがビビりで臆病ならそれこそ私にだって言えることよ！Aは私なんかよりずっと勇敢で臆病なんかじゃないわ。こんな私にすごく優しくしてくれるし、聖騎士相手にも怯まず立ち向かっていて…」

「いやいやいや…！すごく怯んでるよ！？すっごく怯んでたよ！？エリザベスこそ、美人だし優しいし、いい子だし、もうほんとにいい子すぎて、」

「なんだこの謎の褒め合いは！おめーらどっちもいい奴ってことでいいんじゃねーのか！」


ホークちゃんの突っ込みに、私達はピタリと動きを止めて、なんだかおかしくなってクスクスと笑った。
ホークちゃんの言う通り、気が付いたら謎の褒め合い合戦だ。
メリオダスがそんな私達のやり取りを見て、「仲がよろしいことで」と笑った。
仲良く…なれたのかな。私、みんなと。そうだと思いたい。
ふう、と一息ついて、私はみんなの方へ体を向けた。


「あのね、聞いてくれる？」

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