【七つの大罪】黄昏の歌姫.2

75.銀髪の青年 ページ30

「あんたはこっちの部屋」

「…えっ、待ってください！私、逃げたりしないから…だからエリザベスと一緒にいさせてください！」

「ベロニカ姉様、私からもお願いです…！」


連れてこられたのは小さな、家のような場所。
そこで私とエリザベスは別々の部屋に案内され、そこにいるよう言われたけど納得出来ずに反論した。
逃げたりしない。せめてエリザベスと私を一緒にさせてほしい、とそうお願いするけどベロニカの表情は険しくなるだけだった。


「自分達の立場ちゃんと分かってるのか？あんたらは手配犯、お尋ね者！それから私が用があるのはエリーだ。あんたに用がある奴はまた別。だから大人しく言うこと聞きな」

「きゃっ！」

「A！！」


そう言ってベロニカに半ば無理やり部屋の一室に押し込まれ、バタンと勢いよく扉を閉められた。
慌てて扉を開けようとするも、鍵をかけられたのか中からは開けることが出来なかった。
私はズルズルと力なくその場に座りこむ。


「どうしよう…」


エリザベスと一緒の部屋に捕らえられるのなら、まだ少しは安心だった。離されてしまっては、どうしたらいいか分からない。
それに……私を探してる人って、誰？
聖騎士？それともただの普通の人？分からない。

こんなの、原作の物語には絶対にない状況だ。
私が捕まって私に用がある人までいるというイレギュラーなこの状況。
原作の記憶もハッキリ思い出すことが出来ないせいで、判断に困る。
今のこの状況はどうするべき？何とかして逃げるか、メリオダス達が助けに来てくれるのを待つか。

ぐるぐると色々考えを巡らせていると、ガチャリと部屋の扉が開いた。
もしかして、ベロニカが戻ってきた？
そう思って私はゆっくり顔を上げた。



「へぇ、ギーラの言う通り…何てことないただの弱そうな女にしか見えないけどねぇ」

「…だ、れ？」


視界に映ったのは、見知らぬ男の人だった。
銀の髪に、綺麗な青い瞳を持ち腰には剣をさした私とそう変わらないくらいの年齢の男の人。
弱そうな女、と口にしてまじまじと私を見つめるその視線。

この人は、誰？
こんな人、いた……？記憶が薄れてるから覚えてないだけ？うんん、記憶が薄れてたって、今までその人の顔を見れば思い出してきた。ああ、そうだこの人だった、って。
だけど目の前にいるこの人は…どんなに目をこらして見たって何も思い出さないのだ。


「どーもこんにちわ、手配犯のAちゃん」


私は、この人を知らない。

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