【七つの大罪】黄昏の歌姫.2

68.思いやり ページ23

ホークちゃんママが歩くたびに小さく揺れるこの帽子亭。その揺れは、ゆったりしていてとても心地いい。
私は外に出て、帽子亭の壁に背中を預けてその場に座っていた。風を受けながら、ゆったりと変わっていく景色を眺めてボッーとするこの時間が結構好き。

今向かってる町は、「バイロン」って言ってたっけ。
もう私の記憶はあまり頼りにならない。バイロンの町でも何か起こる気がしたけど曖昧だ。
事が起こってから思い出すんだもんなぁ。それじゃあ全然意味ないのに。

……それに、町に着く前に…キングと和解出来たらいいなって思ってたけど。
難しいかなぁ。


「はぁ…」


小さくため息をこぼしていると。


「ほら、はやく行く！」

「え、えぇ〜…いやでも今はやっぱりまだ話しかけるのは…」

「昨日散々Aに酷いこと言ったくせに何で今更怖じ気づくのさ！いいからちゃんとAと話しなよ！」


……ん？
キングとディアンヌ…？私の名前も聞こえてきたけど。
不思議に思って声のする方へ首を傾けてみる。すると後ろの方からキングがいつものあの緑のクッションの上に乗りながらフヨフヨと私の方へ近づいてきた。
キングはどこか気まずそうに「あー、えーと」と言葉を濁す。

まぁ、私もちょっと気まずい。
昨日のことがあるし。でもやっぱり、仲良くやっていきたい。


「昨日はごめんなさい」「昨日はごめんよ」


ほぼ同時だった。
私とキングはお互い目をパチパチと瞬かせ、困ったように小さく笑う。


「なんで君が謝るのさ」

「昨日取り乱して怒鳴っちゃったから…冷静になれなくてごめんなさい」

「君が謝ることじゃないでしょ。昨日はオイラが言い過ぎた。団長やディアンヌにも怒られたよ。王女様にもね。それだけで分かるよ。君が団長やみんなにとても信用されてる存在なんだってね」


だから昨日のことは謝るよ、と言うキング。
まさかキングからも謝られるとは思わなかった。
さっきのディアンヌとの会話から、私に声をかけるのを躊躇ってたのだろう。
でもこうしてキングから声をかけてくれたおかげで私もちゃんと謝ることが出来たんだから良かった。


「メリオダスから聞いたんだよね。私のこと」

「そうだね。君がここの世界とは違う世界から来たって話でしょ」

「ありえない話だよね…。余計怪しいし。でも本当なんだ。嘘じゃない。すぐに全部を信じてくれなくてもいい。これから一緒に旅をして、少しずつ信用してもらえたらって思ってる」

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