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#006 ページ6




自分でも思うよ。なぜカブトムシだったんだって。

乙女の欠片もなさすぎるし、なんなら、ドン引きされてもおかしくなかったはずなのに、優しく笑う海琉くんの姿は王子様そのもの。

だけどそこから、私は海琉くんに会いたい、その一心で目まぐるしい努力を重ねてここにいるわけ...別に、あのカブトムシの子!なんて思い出してほしいわけじゃない。

むしろ、堂々と海琉くんに似合う女性になって、それから会いたかったの。



『海琉くん、おはようございます』

「......Aさん、おはようございます」

「顔と華が挨拶してる...やば、エモ...」



入学式ではもちろん、学園の顔と華ですから新入生代表挨拶をして、その流れで声を掛けてみた。海琉くんは嫌な顔せずにいつも返事を返してくれるけど、これと言って会話も続くわけではない。



『......あ。今日、放課後の文化祭の集まり、一緒に行きませんか?』

「うん、僕も場所不安だし、そうしましょうか」

『はい!お願いします』



優しく笑って海琉くんは自分の教室へ向かうために廊下を進んでいく。私は『華』であっても普通クラスなので、彼とは別の教室。だからこそ、必ず朝はこうして話せるよう、努力をしている。

そうじゃないと、なんだか繋がりが続かない気がして不安になるから。

でも、明日からは話したり一緒にいたりすることの口実を、ちょっとだけ考えないで済む。



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作者名:時雨 | 作成日時:2022年11月19日 10時

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