そのじゅうろく。 ページ16
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SIDE 緑谷 出久
「…うん、引織の考えている通り、僕の”個性”はオールマイトから受け継いだんだ。」
＿＿＿＿＿＿時は遡る
「…あ、あの‼待ってください‼個性のことでお話があるのですが…‼」
長くなりそうであるならこんな所で話すのは良く無いと、相談室に入る。
緊張からギュッと握った拳が汗で湿っているのを感じる。
「その…オールマイトから個性を譲り受けたこと…引織にだけは、伝えさせてください‼」
「むむ、緑谷少女か…」
「もちろん、オールマイトが個性を失ったことも話すことになるだろうし、もしかしたらオールフォーワンのことも…」
「それでも…それでもこれ以上引織に辛い思いをさせたく無いんです‼」
「ヒーローとしてではなく、兄として‼引織の心を守りたいんです‼」
僕は語った
ヒーローとして選択するならば情報の流出を少しでも防ぐために絶対に話してはならないことは分かっている。
もし、万が一にもオールマイトの力が失われている、なんて周知された時にはそれこそ大混乱が起こるだろう。
それでも、引織は僕が無個性なのは自分の所為だと自分を責め、
僕を傷つけないように会話には常に気を使い、
僕が他の子に無個性について馬鹿にされたあれば僕以上に怒ってくれた。
みんなを守るための”個性”を手に入れたのに、最も近くにいる人の心すら守れなくてどうするんだ。
それに引織はきっと気づいてしまう。
僕の”個性”がオールマイトの”個性”と同じものだと。
だって、引織は小さい頃から僕と一緒にずっとオールマイトの活躍を見てきたから。
でも、引織は僕が否定すれば絶対に引き下がる。
そうやって僕をずっと守ってきたんだ。
そうやって守ることで自分自身は傷つくことも構わずに。
「今度は僕が守る番なんです。そのためにも、その心を守るためにも、引織にだけは伝えさせてください。もう1人にしたくないんです‼お願いします‼」
オールマイトは腕を組んで目をつむって聞いていた。
そして僕がブンッと良く頭を下げるとゆっくり立ち上がり僕の頭をくしゃくしゃと撫でる。
「…緑谷少年の意思はよく分かったよ。その意思を大切にしなさい。」
「っでは‼」
バッと頭を上げるとオールマイトはにっこり笑っていた。
「伝えるといい」
「〜っ‼有難うございます‼」
僕は再び頭を下げた。
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作者名：白波(鶏) | 作成日時：2018年10月14日 21時
