まる、サンカク、死角。【花巻貴大】

6.愛の形 ページ6

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及川に奪われたキーホルダーを奪い返した。



「ごめんね、Aちゃん」


話しかけられた途端、涙がこぼれてしまう。



「大丈夫？」

「ねえ、及川。私うまくやれてた？気にしてない感じの態度取れてた？」



一粒、涙を零してしまうと溢れて止まらなくなる。
そう、貴大への思いも
少しでも気を緩めると、崩れ落ちてしまいそうなんだ。



「なんでそんなに強がるの？」

「強がってるわけじゃない…貴大の迷惑になりたくないだけだよ」



ハンカチで涙をぬぐって、やっと止まったことを確認すると
キーホルダーをいつもの鞄の内ポケットにしまった。



「好きな人のこと、迷惑なんて思う男なんていないよ。
そんな奴いたら性格悪い奴か本当に好きじゃないかのどっちかだ」


「けどもう貴大は私の事好きじゃないからね」


「じゃあ、俺にはかけてよ。迷惑ってやつを」


「どっちかっていうと及川に迷惑かけられてるの私の方なんだけど…」




その時チャイムが鳴った。
まずい、自分の教室に行かなきゃ。
足を動かそうとしたとき、及川に腕を捕まれた。



「Aちゃん……」


「離して。授業遅れる」


「Aちゃんにとっての“好き”が自己犠牲なら、そんなの俺が変えてみせる。
楽しいことだけじゃなくて、Aちゃんの辛いことも一緒に受け止めるから
俺に本当の笑顔を見せて」



それは及川の本気だった。
私の気持ちはそう簡単に変えられないけど
その言葉がすごく嬉しかった。



「及川…」

「Aちゃんのことが好きだ」



まっすぐ、真剣な瞳で。
私を見つめてそう言ってくれた。

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