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「……及川さん。俺も、俺は家族を殺してでも、あいつを救いたい。もしかしたら、傷ついてるかもしれないから……です」
じゃあ、と少し頭を下げて出て行こうとした時、
「……あー……もう。いいよ!しょうがないなあぁ!!」
頭がおかしくなったとしか思えないくらいに及川は大声で叫んだ。
「え、ちょ、え!?」
あからさまに動揺して影山は振り返った。
「蒼海ちゃんは殺さない。蒼海ちゃんを殺そうとするやつは殺す、それで俺は動くよ!」
少しだけ、周りも安心したようだ。結局、蒼海Aを殺したくない、そう思われてしまう悲しい運命なのだ。
「やっとか、及川」
黒尾がドアを開け、顔を出す。
及川は少し驚いてから、満面の笑みをこぼした。
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『ふふ、ふふふ』
不気味に笑う声が頭の中で響く。
その間にも、魔物が1人、また1人と死んでいく。いや、魔物に1人は違うか。
『ん〜……あ!強敵来たんじゃない?』
夕闇燈が言って、前を見る。………………
「牛島若利」
最強の大魔導士、牛島若利。
「……お前、何が目的だ」
恐らく、こいつは知っている。魔物を呼び出したのが私だと。
「それが分からないなら退いてくれないかな。邪魔なんだ」
でも、でもね。もう疲れたからさ。できればそこを退かないでくれ。それで私を_____________
殺してくれないかな。
そんなら甘ったれた事を吐いたところで、きっとこいつは私を殺さない。捕らえて、一生檻の中に閉じ込めておく。
だから、こいつを殺そう。
「朱雀」
牛島若利の、顔が歪んだのがわかる。
自分の中から、憎悪と悪意と絶望が溢れ出す。
『あは、あははははは』
楽しそうに、私を嘲笑うかのように、夕闇燈が笑う。頭が割れそうで、でもやめるわけにはいかなくて。
神に嫌われた私の、1つの願い。
私を、殺してください。
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作者名:凛花 | 作成日時:2017年1月9日 16時