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「は?」
「噛みついて血吸うだけでバリバリ食べられる訳じゃないんですよね?」
「...おん」
戸惑いながら彼が答える。
「じゃあいいですよ、その代わり私をここに置いてください」
「あんた、俺のこと...怖ないん?」
「怖いか怖くないかって言えば、もちろん怖いです」
「でもこの恐怖は未知のことへの畏怖であって、私のことなんて気にしないで目が合った瞬間ガブリって齧っちゃえばいいのに、さっきから必死に街に返そうとしたり近寄るななんて警戒したり、そんな優しい貴方に対してでは絶対ないです」
「...ええで、もう好きにしぃ」
覚悟したように彼はこちらに足を進め、私の手をとった。
少しヒヤリとした体温が私の手に伝わってきた。
「名前、聞いてもええ?」
「Aです」
「A...えぇ名前やな」
彼は私の名前を何回も口の中で転がしながら私の手を指の腹で優しく撫でる。
「貴方は?」
私も彼の名前を呼んでみたくなりそう尋ねれば眠た気な瞳がこれでもかと開かれ揺れる。
「呼んでくれるん?」
「...?はい」
「オサムや」
「オサムさん」
「...おん」
名前を呼ばれたオサムさんは、はじめてとても嬉しそうにへにょりと笑顔を浮かべた。
その笑顔が可愛くて、顔が良いって徳だなと思う。
「オサムさん、どおぞ召し上がれ」
もっともっとオサムさんの色んな顔が見たくて、揶揄うように彼の耳元で囁くと、
「あかん!なんなんお前は?!」
耳まで真っ赤にしたオサムさんと目が合った。
堪えきれなくなってケタケタ笑う私を見てオサムさんは拗ねたように
「なんや、めっちゃ腹すいてきたわ」
と吐き捨てて私の首筋に牙を突き立てた。
2nd impression : 北さんリスペクトがすごい→←▽


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作者名:kinu | 作成日時:2025年1月19日 7時