03 燃えないゴミの心は燃える ページ5
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「い、いちまつぅ…！」
用事を終えて家の戸を開けると、突然クソ松が涙目で飛び付いてきた。
ぐすぐすと鼻を鳴らして俺にしがみ付いて来るクソを、手荒く体から引っぺがす。
そうして、おどおどと不安げに瞳を揺らす実の兄に、深い溜息をひとつ。
「お前さ……飛びつくならもっと勢いよく飛びついて来いよ。そっちの方が衝撃あって気持ちいいんだからさァ……」
「え？あ、ああ……すまない…？」
「悪いと思ってるなら一発殴って」
玄関先でカラ松に速攻駄目出しを食らわせて、殴れと催促しながら右頬を差し出す。
案の定クソ松は「弟にそんなこと出来ない！」と言いながら首を横に振って全力で拒否した。
「ケッ、だからお前はクソ松なんだよ」
悪態を吐いて家に入ろうとすると、「あっ、ちょ、待て一松！」。
なぜか慌てた様子で引き留めてくる。
「なに？殴ってくれんの？」
「ちがう！居間の方から、知らない女の笑い声が聞こえるんだ」
もしかしたら幽霊かもしれない、と泣きそうな顔してビビる二十歳の男。
そんな実の兄を冷ややかな目で見詰めながら耳を澄ますと、確かに下卑た笑い声が聞こえてきた。
「……幽霊って人に痛みとか与えてくれんのかな」
「そんな呑気なこと言ってる場合じゃないだろ！」
下品な笑い声を俺に向けて欲しい一心で靴を脱ぎ捨て、そろそろと音を立てないよう廊下を歩く。
スッと少しだけ襖を開けて中を覗くと、何やら楽しそうに笑う女の横顔が見えた。
目を凝らしてそいつの手元を見ると、トド松がバ先の女子から貰ったらしいクッキーが握られている。
「なんだよ、普通の人間じゃん」
誰かの客だろ、と興ざめして隣を見れば、怪訝そうに目を細めて女を見据えるカラ松。
「……何でクッキー縛られてるんだ？」
「あ？縛られてる？」
無愛想に問い掛ける俺に、カラ松は小さく頷いた。
再び襖の奥に目をやって「俺のあやとりで卑猥なことされてる…」と呟く。
縛るやら卑猥やら、コイツとうとう狂ったかと思いつつ、未だにゲタゲタと笑う女に視線を向ける。
女の手元に目を凝らせば、赤い紐で縛られたクッキーが見えた。
「……は？」
その光景に、ぽかんと開いた口から疑問の声がもれる。
六角形を作るように形成された、さながら亀の甲羅のような縛り方のそれ。
……俺も縛られたい。あの目で蔑まれたい。
ふつふつと腹の底から湧いてくる欲望に、気付けば勢いよく襖を開けていた。
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スカイ(プロフ) - 本当に好き....!!!めちゃめちゃ面白いです！作者様がまた書きたいと思いましたら、更新して頂けるととても嬉しいです！待っています！ (2020年6月2日 18時) (
レス) id: a0f03080e5 (このIDを非表示/違反報告)
おもちもちもちもんだみん(プロフ) - おもしろい〜！ (2019年2月14日 14時) (レス) id: bcc917b3e1 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモ(プロフ) - ナバポさん» コメント有難うございます！こじらせクズがとても好きなんです〜！楽しんでもらえてとても嬉しいです！ (2017年12月23日 12時) (レス) id: 63c1855969 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモ(プロフ) - 俺の嫁は二次元(ｷﾘｯさん» コメント有難う御座います＾＾年に二度ほどしかない更新ですが楽しんでもらえたら嬉しいです！ (2017年12月23日 12時) (レス) id: 63c1855969 (このIDを非表示/違反報告)
ナバポ(プロフ) - 二人がクズをこじらせている笑面白かったです！ (2017年6月14日 20時) (レス) id: 03f7a55e36 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ヨモ | 作成日時：2015年12月15日 21時
