30 バイトしよう ページ32
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「高橋さん、ゴミ捨てお願い」
「あ、はーい!」
居酒屋の厨房で店長にそう頼まれ、ぱんぱんになったゴミ袋を手に裏口のドアを開ける。
あれから容赦ないプレイに付き合わされて散々な目に会った私は、二人に会わないために血眼で仕事を探してバイトをしていた。
ギャンブル大好き呑んだくれニートと最低な三拍子を揃えていた私に働く日が来るなんて、偉大過ぎる進歩だ。
実際、母は泣いた。
「お礼なんか言いたくないけど、これに関してはあの二人に頭が上がらないなあ…」
はは、と苦笑いしながらポリバケツの蓋に手をかける。
パカッ
「ああ、俺を照らすサンシャイン…!今までどこに雲隠れしてたんだ?このシャイガールめ、相変わらず楽しませてくれる…!」
「……………」
そっと蓋を閉め直し、その上に大きな石を乗せる。
やあ、今日はいい天気だなぁ。
ガタガタ揺れるバケツには気を留めず、澄み切った青空に目を向けて顔をほころばせた。
早く厨房に戻るべく、大きなゴミ袋を抱え直して他のバケツの蓋を開ける。
「フヒッ、最高ォ〜…ほんとに自分がゴミになってるみたいで、すげぇ興奮する…。ほら、早く言えよ、ゴミクズだって。使えねえゴミだって罵れよ」
ハァハァハァ。
上半身を乗り出そうとするマゾ野郎の頭の上から、思いきりガンッと蓋を叩きつけ素早く南京錠をかける。
無心でバケツにジャラジャラと鎖を巻きつける間、「いっだあ!♡」と中で反響する歓喜の声に、私はもう半ば涙目だった。
何でだ、何でここにあいつらが居るんだ。
万が一のことも考えて、赤塚区から二駅も離れた場所でバイトを決めたのに、なぜ。
頭を抱えてしゃがみ込むと、ぽんぽんと労わるように肩を叩かれる。
いつの間に出て来たのか、バナナの皮を頭に乗せたカラ松さんが、意地悪そうに目を細めて私を見下ろしていた。
「ご主人様に許可も取らず、勝手な真似するからバチが当たるんだぜA。許して欲しいなら、そのスカートを俺の前で恥じらいながらめくれ。今すぐに」
「お客サマの頭にこんなナマぬるいコブ作っちゃって許されると思ってんのォ?クレーム出されたくなきゃもっと力いっぱい殴れよ、早速お仕事クビになりたくないでしょ?」
そう言って赤く頬を上気させた一松さんに、もういっそ、私がゴミになりたかった。
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スカイ(プロフ) - 本当に好き....!!!めちゃめちゃ面白いです!作者様がまた書きたいと思いましたら、更新して頂けるととても嬉しいです!待っています! (2020年6月2日 18時) (レス) id: a0f03080e5 (このIDを非表示/違反報告)
おもちもちもちもんだみん(プロフ) - おもしろい〜! (2019年2月14日 14時) (レス) id: bcc917b3e1 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモ(プロフ) - ナバポさん» コメント有難うございます!こじらせクズがとても好きなんです〜!楽しんでもらえてとても嬉しいです! (2017年12月23日 12時) (レス) id: 63c1855969 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモ(プロフ) - 俺の嫁は二次元(キリッさん» コメント有難う御座います^^年に二度ほどしかない更新ですが楽しんでもらえたら嬉しいです! (2017年12月23日 12時) (レス) id: 63c1855969 (このIDを非表示/違反報告)
ナバポ(プロフ) - 二人がクズをこじらせている笑面白かったです! (2017年6月14日 20時) (レス) id: 03f7a55e36 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヨモ | 作成日時:2015年12月15日 21時