【おそ松さん】頼むから燃えてくれ！【色松】

27　BANG！ ページ29

「回り出したぜ、恋の歯車！！」



不良達からヒーローよろしく私を助けてくれたカラ松さんは、突然ビリィッと着ていた服を破ると、上半身裸のまま私をコンクリの壁に押し付けた。



「えっ、えぇ…？」



素直に格好良いなカラ松さん、なんて少女漫画思考に浸っていた私の頭は、一気にギャグ漫画思考へと引き戻される。

もはやドン引き状態にある私を壁にぐいぐい押し付けながら、カラ松さんはずいっと顔を寄せてきた。


サングラス越しに見える目は、ギラギラと光って私を離さない。



「気付いた、気付いてしまったんだA！名前をつけるのに頭を抱えていたこの感情に！痛いと言われるだけだった俺自身の胸の痛みに！好きだ、お前が好きだA！出会ってまだ数か月の俺がこんなこと言うなんてバカげてるのは分かってる。でも、これは運命なんだ！言うなればディスティニー！だから俺と付き合ってくれ、今すぐ俺と熱いベーゼを交わしてくれよ…！」



赤く頬を染めながら、痛いくらいに私の肩を掴む彼。
たった一息でまくし立てられたラリった言葉に、脳がシェイクされるかと思った。

早口過ぎるせいで所々聞き取れなかったし、後半は何を言っていたのかさっぱりだ。



「……お前の、返事は？」

「あ、え？」



後半だけでも解読しようと必死に頭を悩ませていると、不安げに顔を覗き込んでくる。



「あ、すいません。ちょっと聞き取れなくて」

「だから、俺の最高に熱いハートがお前にBANGされてしまってるんだと……！」

「？？？」

「いや、だからぁ…！」



ぜえぜえと苦しそうに呼吸を繰り返して汗を拭うと、カラ松さんはハッと何かを思いついたように私から離れる。

ビリビリに破けた服を拾い上げながら前髪を掻き上げ、フッと笑みを浮かべる。
カラ松さんは裸でドヤ顔を決めながら、私の顎をくいっとすくい上げた。



「いや、今はまだ俺の気持ちは秘密にしておこう…。いつか最高にキューティクルなお前のために、夜景の見える場所で愛を囁くぜ」

「？キューティクル？」



いまだに疑問符を浮かべる私の手を握ると、カラ松さんは幸せそうに目を細める。

片目を瞑り、右手を銃の形に見立てて「BANG！」とか何とか言いながら私の胸を撃ち抜く動作をすると、元気良く路地裏を駆けていった。



「…また借り作っちゃったなあ」



ドブに足をはめてすっ転ぶ彼の後ろ姿を見つつ、何だか痛む肋骨を押さえて帰路を急いだ。



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