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「は?姉ちゃんンとこ…って」
「それが早えだろ。テメェらは金使わねえですむし、Aを守ることもできる。まさに一石二鳥」
軽く言ってのける空却くんに私も一郎も絶句する。
確かにそれは一石二鳥だ。でもそれは私たちにとっては、の話だ。わざわざ“お金を出し”て“ボロいアパート”に引っ越してくるなんて、空却くんにはなんの得もない。それどころか損だ。
そう考えていることを感じ取ったのか空却くんはケラケラと笑う。
「考えんな考えんな。金なら心配いらねえよ」
「いや、空却お前金ねえつってたじゃねえかよ。大家さんにどうやって話つけるっつーんだ」
「まあ、任せとけって」
そう言うと空却くんが先に走っていく。私の住むアパートはもうすぐそこだったのでそこへ向かったことはわかった。
先へ向かう空却くんの背中を見て一郎が隣でため息をつく。
「アイツ…また突っ走りやがって…」
「なんていうか…すごいね、空却くん」
「色んな意味でな」
呆れたように言う一郎。まるで子供を相手にしているような、そんな仕草に少し笑いが零れる。
真っ先に先陣切って行動に移す一郎と空却くん。考えるより先に動く2人は意外と良いコンビなのかもしれない。それに、空却くんなら、きっと、私の知らない…知れない一郎の隣にも、いてくれる。
「……敵わないなあ」
「?…姉ちゃん?」
小さな呟きが聞こえていたみたいで首を傾げる一郎に、なんでもないと首を振る。それと同時にアパートに着いた。
空却くんはどうやら管理室にいたようで、私たちに気づくと手を振りながら叫んだ。
「事情話したら家賃諸々待ってくれってよー!一郎ー、拙僧の給料はいつ出んだー!?」
「知るか!百舌九さんに聞け!!……アイツ、すげえな…」
「か、敵わないなあ……」
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追・誤字修正 2022.2.22
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りんご - 滅茶苦茶面白いです...!今更ながら、更新待っています! (3月30日 11時) (レス) @page19 id: 76f76e1010 (このIDを非表示/違反報告)
ぱい - 面白すぎ!話にスルッと入れる神作品!更新待ってます! (2022年6月23日 20時) (レス) @page19 id: 0c35d3b667 (このIDを非表示/違反報告)
月宮 朔(プロフ) - 悠希さん» ありがとうございます!い一気読みお疲れ様です…!いやぁ、お兄ちゃんしてる一郎くんを公式で見てると、つい甘やかしたい欲が働いて可愛くなっちゃうんですよね…()これからも頑張ります!! (2021年8月14日 9時) (レス) id: 9e4a60ca3b (このIDを非表示/違反報告)
悠希(プロフ) - 今日この作品見つけて一気読みしましたw一郎くんめちゃ可愛いです!これからも更新頑張ってください!応援してます! (2021年8月13日 22時) (レス) id: 84d16d7788 (このIDを非表示/違反報告)
月宮 朔 - Reiさん» ありがとうございます!Rei様には何度もコメントをいただき、私もう超感激です…!これからも頑張ります、ありがとうございます!(非ログ垢から失礼いたします) (2021年8月12日 20時) (レス) id: 40534f6bdf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月宮 朔 | 作成日時:2021年8月12日 17時