#111 証明 ページ11
…
大丈夫、なんともないなんて誤魔化して、彼らとバイバイする。
今は時間が無い。だから観戦してくれて会いに来てくれたけど、いつもみたいに長話はしないでその場をあとにした。
ーーーー
走った。ただ、ただ、走った。アーマーガアにもリザードンにも頼らず、ただ走った。
何故走ったのかは分からない。運動能力皆無の私が何故走ったのか、私は本当に分からない。
走った末に見つけたのは小さな小さな、ひとつの小屋だった。ボロボロで最近使った形跡のない、うってつけの場所。静かで暗くて、邪魔も入らなそうな所。
中に入って扉を閉めると、少し先にあるひとつの大きな隙間から漏れ出る一筋の光だけしか光源がない程暗かった。丁度いい。
「ブラッキー」と名前を呼んでモンスターボールから彼を出した。
ここは真っ暗だから、彼の深紅の瞳と身体の光る文様が美しく輝く。
「綺麗…かっこいいね。ブラッキー」
思ったことを素直に言葉にして、そのまましゃがんでブラッキーを撫でようとした。
撫でようと、した。
<触るな>
拒絶。それが彼からの答えだった。
でも直ぐに謝罪の言葉が述べられる。
<っ、…すまない、Aでも俺は、お前に相応しくないから>
なぜ、私に相応しくないと思うのか。まずそれを聞かなくてはいけない。
「それは、どうして?私はブラッキーと一緒に行きたいのに」
<それは…>
言葉に詰まった後、泣きそうな顔をして語った。
彼は、自分が他の子と違ってダイマックスもメガシンカも出来ないのに、相棒でいていいのかと思っていたらしい。
「ばかっ!!」
<!?>
「当たり前でしょ?私の相棒はブラッキーだけって決まってるの。もっと、自信もって?」
<なんで、そんなこと>
「寧ろ私がブラッキーに、みんなに相応しくないって思ってるんだよ?この世界の人間じゃないのに、みんなの主が私で良いのか、ずっとずっと、出会った時から思ってるんだ」
<いいに決まってるだろ!俺の主はお前だけだよA!きっと、みんなだってそう言う>
そう言うと同時に零れた雫が月明かりに照らされた。
彼の紅の瞳と相まって、美しい宝石のように見えた。
私の見た中でいちばん綺麗なものだったと、断言出来る程に煌めいていた。
ーーーーーーー
無事に、そして改めて相棒になったブラッキーと私。
ブラッキーは相棒だけど、他のみんなとも戦いたいと思い、ジムリーダー戦ではブラッキーとコートに立たないことに。
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灰かぶり(プロフ) - ははさん» 返信が遅れて申し訳ないです。神作品だなんて…とても嬉しいです!主人公(ユウリちゃん)は、夢主が弱らせてるその時なら捕まえられると思って投げました。最後に、私の拙い文書を楽しんで最後まで読んでくださり、ありがとうございました (2022年5月17日 23時) (レス) @page21 id: 320546f592 (このIDを非表示/違反報告)
はは - 神作品…!!質問なんですけど、なんで最後主人公はモンスターボールを投げたんですか?捕まえられると思ったのかな…? (2022年5月8日 16時) (レス) id: a80637e585 (このIDを非表示/違反報告)
灰かぶり(プロフ) - ユウさん» 返信遅くなってしまい申し訳ありません。お楽しみいただけたようで何よりです。終盤に近づいて参りました。これからもご贔屓にしてくださると幸いです。 (2022年1月24日 11時) (レス) @page17 id: 992ebf245b (このIDを非表示/違反報告)
ユウ - 続きが楽しみです! (2021年10月17日 0時) (レス) @page10 id: 3f13f330b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:灰かぶり | 作成日時:2021年3月28日 22時