十話.廣島 ページ12
「広島〜。広島〜。」
列車で山を越え、
呉から広島へやって来た私達。
列車を降りると、�獨�島�瓩判颪�れた看板が目に入った。
駅は人で溢れている。
『はあ…広島…着きましたね。
ほいでこれから、どちらに？』
辰眞「うん…Aさんと、やりたいことがあるんじゃ。」
『やりたいこと？広島で？』
辰眞「はい、広島で。呉は…お互い慣れてますけえ、冴えんじゃろ…、うおっ、」
『ちょ、辰眞さ…うあっ』
「これそこの。邪魔じゃ邪魔じゃ」
「駅で止まるなや」
もう一度言おう。
駅は人で溢れている。
私たちが立ち止まる場所など無いのだ。
それに戦争もはじまってか。
なんだか皆ピリピリとしている。
辰眞「ありゃ、すみません。
…Aさん。駅は人が溜まっていけん。一度人混みからぬけましょう。」
『あっ、』
私の右手を、何かが包んだ。
右手を見る。
誰かの左手が、優しく私の手を握っていた。
辰眞「…はぐれてもいけん。
手え、離さんでください」
『は…はい…！』
────────────────
辰眞さんに連れられ、広電(路面電車)に乗ったり、歩いたり。
辰眞さん、案外地形には弱いようで。
彼は幾度となく道を間違えては、
広島の人達に教えられ、歩く。
彼は…私との逢い引きだから。
だから焦っているのだと思う。
繋がれた右手は、汗ばんでいた。
そうしてようやく。
私たちは、辰眞さんの目的地であるという、紙屋町いう所へやって来た。
『この辺りですか？』
辰眞「はい。すみません…わしゃ地図に弱くて…設計図にゃ強いんじゃが」
『はあ…』
辰眞さんは相変わらず私の右手を握り続けている。優しく、それでいてしっかりと、離れないように。
彼は言った。はぐれないように、と。
でも、本当にそうかな。
小學校の同級だけど、私は彼を知らない。
話したこともないから、彼にとっても今日は初対面みたいなものだ。
だから彼は臆病になって、手を繋いでるんじゃないかな。
私の心が自分から離れないように引き留めているんじゃないかな。
せっかく自分に向いた私の心を、必死に自分のものにしようとしてるのかな、なんて。
この人も、もしかしたら臆病なのかな。
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なー(プロフ) - 初めて読ませていただきました。心温まるお話、続きが気になります！ (12月14日 16時) (
レス) @page27 id: 5a5cf333fe (このIDを非表示/違反報告)
さとみ - はじめまして。楽しみに読ませてもらってます。完結したお話しでも再開するのでしょうか？またお話し読めるのを楽しみにしてます。 (2022年9月30日 14時) (レス) id: 1dc70ba9d0 (このIDを非表示/違反報告)
にゃんこ(プロフ) - 最近すごく『この世界の片隅に』にハマっていたんですよ、、ストーリーもキャラクター同士の関係も最高です…更新楽しみにしていますね (2020年7月12日 23時) (レス) id: bc0dbb2048 (このIDを非表示/違反報告)
もえこ(プロフ) - お話が動き始めて本当に嬉しいです！ありがとうございます！これからも頑張ってください！ (2020年3月26日 17時) (レス) id: 8b605c37d7 (このIDを非表示/違反報告)
Reika(プロフ) - おかえりなさい^ ^作者さんのペースで更新頑張ってください！読みに行きますね。 (2020年3月15日 23時) (レス) id: 616ea4ec17 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：杏 | 作成日時：2018年7月22日 11時
