Spica Ⅱ【菅田将暉】 (ページ3)

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EP9 ページ3

翠が熱を出した。

3月中旬の事だ。

同棲生活にも慣れていて、翠も少しずつ親戚が経営しているという近所のカフェで働き始めていた。

その日の夜遅く、家に帰ると珍しくリビングの電気がついていた。

普段、翠は眠気に勝てず早くに寝てしまう事が多い。
だから不思議に思った。

「……翠？」

電気の消し忘れか？

そう思いながら歩を進めると、リビングのドアからは陰になるような所に翠が倒れていた。

「翠っ？！」

駆け寄って翠の体に触れる。

翠は荒く呼吸をしていて、その体は酷く熱かった。

慌てて抱き上げてベッドに運ぶ。

体温計を持ってきて翠の脇に挟む。

冷蔵庫に常備されている冷えピタを取り出し、翠の額にそっと貼った。

「っ………ん」

翠がゆっくりと目を覚ます。

相変わらず苦しそうだった。

「翠」

「ま……く…」

ポロポロと零れる涙は生理的なものだろう。

優しく拭ってやる。

「寝ててええよ。
苦しいやろ。明日の朝早くに病院行こうな」

翠は喋る元気もないようで、苦しそうに小さく頷いた。

暫くして体温計が鳴り、39度を示す。

かなりの高熱だ。

いつから倒れていたんだろう。

もう少し、早く帰ってくれば良かった。

様々な後悔が頭の中をグルグルまわる。

嗚呼、全然翠を守れていない。