Spica【菅田将暉】 (ページ8)

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車窓の景色は、目で追えないくらい早く過ぎていく。

新幹線を使えば、新宿から長野までは1時間ほどで着く。

特に何をするでもなく、俺は窓の外を見続けていた。

「………翠」

翠は長野県の人だったな。

もしかしたら、もう東京にはいないのかもしれない。

実家に帰ったのもしれない。

翠の実家はケーキ屋さんだと言っていた。

この機会に行ってみようかと思う。

『次は、長野～長野～』

減速していく新幹線。

あまり広げていない荷物を素早く纏め、席を立った。

そこまで長野に降りる人は居ないようだ。

出口にはあまり人が集まっていない。

新幹線が完全に止まり、出口が開いた。

後ろの人に押し出されるようにして降り立った長野。

俺が乗っていた車両に長野に降りる人が少なかっただけで、駅のホームには結構人がいた。

俺は突然の事に唖然とする。

けれど、気を持ち直して歩き出した。

今日は撮影の前泊だ。

何処で何していようが、マネージャーが予約したホテルに決まった時間にチェックイン出来れば問題は無い。

……さて、ケーキ屋さんを目指そう。

歩き出した俺の息は、白く濁って空気中に消えていった。

「……さむ…」