Spica【菅田将暉】 (ページ26)

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昔は時間がなかった。

お互いに忙しくて、テーマパークに行くのも日帰りだった。

だから、せかせかとアトラクションに乗っていた記憶がある。

だけど今日は違う。

ホテルも予約してあって、時間は十分にある。

翠はあまり上手く歩けなくなったし、走るなんて以ての外。

だからあまり急がず、ほどほどにアトラクションに乗り、本当にデートみたいな時間を過ごした。

人が多い場所、夜になると翠はやはり怖いらしくてかなり強く手を握ってくる。

俺は、「大丈夫だよ」という意味を込めて強く握り返した。

その度に不安そうな表情が少し和らぐ。

「翠、そろそろ帰ろうか」

ショーも見て、お土産も買って。

真っ暗な空を見上げて聞く。

「……うん、そうだね」

翠は名残惜しそうに返事をした。

「明日は何処行きたい？」

「……オススメは？」

「オススメかぁ。わからへんなぁ」

「んふふ、結局？」

「ホテルついてから調べよ」

「うん」