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次の日、夕飯時に撮影を終えてspicaに向かった。
店とは反対側にある玄関のインターホンを鳴らす。
控えめにドアが開き、翠が顔を出した。
俺である事を確認すると、翠は安心したような顔をする。
「来たけど、どないしたん？」
「ちょっと、待ってて」
翠はバタン、とドアを閉めてバタバタと家の奥へ向かった。
外に締め出された俺は苦笑しつつ翠の帰りを待つ。
暫くして、再びドアが開いた。
翠は紙袋を持っていた。
「……これ」
「なぁに？これ」
「これ、クッキーの詰め合わせと、プリンとゼリーと、私が作ったマカロンと…」
「翠が？」
翠が、こくりと頷く。
「将暉君、マカロン好きだって言ったから。
粗末だけど、クリスマスプレゼントね」
「ありがとう！」
「……明日で東京戻るんでしょ？
だから、お土産っていうか何ていうかそんな感じ」
「お金は…」
「いいよ。
家族満場一致で渡す事決定してるから」
「……そっか」
翠の家族に認められた。
それが、嬉しかった。
「……私、もう芸能活動はしない」
「うん」
「東京に行くのも怖い」
「うん」
「……人の視線も怖いし、自分の名前呼ばれるだけで苦しくなる」
「………うん」
「……だけど、私頑張るよ」
翠の表情は、再会した時の無の顔が嘘のように輝いていた。
俺の知っている翠の顔だ。
「頑張って、いつか将暉君に会いに行くから。
……だから、将暉君もまた来てね」
「…うん」
翠がこれから頑張らなければならないものは、酷く大きくて辛いものになるかもしれない。
だけど、翠は自分でそれを選んだのだ。
十分に前に進めるようになったらしい。
「……待っとるよ。
また来る。
……頼むから、LINEは見てや？電話も。
…もう、変な心配はしたくないねん」
翠はクスッと笑う。
「わかったよ」
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作者名：hoshina
作成日時：2019年10月7日 19時
