38話 ページ38
「一颯さん」
先生は、酸素マスクをした状態で、私の事をゆっくりと見た。
もう、昔のような元気な姿は何処にもない。
「見て、愛優がね。
一颯さんを見ると、笑うの」
「あ〜」
先生は嬉しそうに目を細めて、私が先生の横に寝かせた愛優を優しい目で見ている。
愛優は元気で活発で、先生の顔をペタペタ触る。
酸素マスクの管を口に入れようとした時はさすがに引き剥がしたけど、それも泣かないで笑った。
「先生っ」
「先生！」
私の呼び掛けのおかげか、沢山のクラスメイト達が来た。
私と先生、そして愛優を見て皆が一瞬でその関係を理解する。
「一颯さん、よかったね。
みんなから、愛されてるんだよ………先生」
先生は驚いたように皆を見ていた。
それから、嬉しそうに口角をゆっくりあげる。
「………ぁ、か……り」
先生に呼ばれて、先生の手を握る。
愛優は沢山の人を興味深げに見ていた。
「………ご……めん、ね」
「謝らないでください」
「………あか……り、は………しあわ……せ、に……な……て」
「私、じゅうぶん幸せです。
貴方に出会えた事も、愛優に出会えた事も、今こうして、貴方の手を握れている事も。
一颯さん、大好きです。愛してます。
それはずっとずっと、私が死ぬまで変わりませんっ」
「……ごめ、ん………………あ、かり…………あり、が…………と、う」
先生の目から、涙が1粒零れて、先生がゆっくりと目を閉じる。
ﾋﾟｰ、とうるさく鳴り響く機械の音。
嗚呼、死んでしまったのだと理解するのはやけに早かった。
それでも、なんだか……寝ているみたいで、また起きるんじゃないかって、そんな気がしていた。
愛優が機械の音に驚き泣き叫ぶ。
その声にハッと我に返って、先生の手を更に強く握った。
届け、届いてくれ。
死んでも尚、最後まで残るのは聴覚だと言うから。
「先生。
私を、さくらを、皆を、助けてくれてありがとう。
澪奈を、救おうとしてくれてありがとう。
世界を敵に回してまで、正義を訴えかけてくれてありがとう。
一颯さん。
愛優のお父さんになってくれてありがとう。
愛優の名前を考えてくれてありがとう。
自分も苦しいのに、そはにいてくれてありがとうっ………。
大好き、ですっ……」
号泣してしまった私の肩を、隼人が泣きながら抱く。
「親子揃って泣くなよ……」
私は愛優を抱きしめて、泣いた。
先生が残してくれた1番の宝物。
嗚呼、産むと決めてよかった。
貴方と、1年過ごせて幸せでした。
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rina - hoshinaさんこれからも頑張れ! (2022年12月7日 23時) (
レス) @page37 id: 265817b150 (このIDを非表示/違反報告)
rina - 小説とても感動した (2022年12月7日 23時) (レス) @page37 id: 265817b150 (このIDを非表示/違反報告)
蒼炎 - とても読み入って、泣きそうになりました！！とても面白かったです！感動しました！ (2020年1月26日 13時) (レス) id: 874e279780 (このIDを非表示/違反報告)
hoshina(プロフ) - akiraikaさん» ありがとうございます！！そう言って頂けて、ホントに嬉しいです！！これからも頑張ります！！ (2019年6月12日 12時) (レス) id: 8ee6c3887f (このIDを非表示/違反報告)
akiraika(プロフ) - とても素晴らしかったです。一行読む度に涙が出てなかなか読み進められない。本当に素敵なお話でした。これからも頑張ってください。 (2019年6月12日 11時) (レス) id: f2ff021446 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：hoshina
作成日時：2019年3月15日 12時
