そんな2文字で終わらせていいものか【HQ】 (ページ3)

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そいつは今日もなんの気無しにインターホンを押してきた。

「A！おはよう！」

少しダボッとした黒い学ラン。私よりほんのちょっぴりだけ大きい背丈では着こなすにはまだ早かったようだ。

『なんだか、入学って感じしないな。』

「まぁ、幼稚園の時から一緒だしな。」

ケラケラ笑う夕に少し表情が緩む。
今日から烏野高校へ入学する。いつも猫背な背筋もピンと伸びてしまう。

「A制服ダボダボだな！」

『君にだけは言われたくない。学ラン目当てで入学してきたくせに、そんなんじゃ意味ないじゃん。』

「ちげーよ！これからだ！！」

ムキになって返してくる彼は見ていて面白い。
同じ中学で烏野高校に入学してきたのは私らだけではない。

事前に伝えられていたクラスに入るとみたこおあるような顔がチラホラいた。

が、皆緊張しているようで顔は強ばっていた。それは私も同じ。が、隣の奴はキラキラと目を輝かせている。クラスまで一緒とは腐れ縁にも程がある。

入学式はその緊迫した空気感で進められた。そして入学式が終わり、グラウンドに出れば部活動勧誘をする先輩たちに囲われる。

「Aは美術部か？」

『…あー、うん。そのつもり。』

「やっぱり！中学でも表彰されてたしな！」

にぃ、と笑う夕に笑い返す。きちんと表情筋が仕事をしているかは分からないが。
表彰されたといっても優秀賞。いわゆる2番目の賞状。最優秀賞とは全くの別物だ。

はっきり言おう。私は西谷夕が嫌いだ。私と違って才能に恵まれ、努力が実る彼が、大っ嫌いだ。

こいつには私の気持ちなんて分かりもしないのだろう。この劣等感は死ぬまで分からないのだろう。

あぁ、早く高校を卒業したい。
入学初日からそんなことを考えてしまう。

「もちろん、俺はバレー部！」

聞いてもないことを堂々と答える彼に『頑張って』と素っ気なく返した。