あまい ページ44
ふわりと鼻を擽るのは甘くて、とろける匂い。
彼女から、いつも漂ってる優しくて、甘い匂い。
僕はそんな先輩の匂いと、甘い物が好きだと笑うその顔と、たまに見せる真剣な瞳を好きになった。
メガネはかけてなくて、どこか丸い瞳をしてて
いつも結んであって流れる黒髪はとてもかっこいい。
たまに近づきすぎたら顔が真っ赤になってしまうところも、
気を許した人にはちょっと冷たくなったり、言葉が雑になるとこも。
彼女の冷たい空気に反して匂う甘い香りが、全て打ち消していく。
甘くて、もう一度味わいたくなる空気へと。
僕の一方的で伝わることのない片思い。
もし、って考えないわけじゃないけどありえないことだから。
だって、先輩のこと好きな人が沢山いるから。
僕は先輩の“お気に入り”を目指して、優秀でたまにミスするドジっ子な後輩を演じる。
「Aせんぱーーい!!!」
「あら、瑠衣」
振り返ってクスッと笑った先輩。
なびく髪が夕日に反射して、とても綺麗。
「部活終わったとこなんです!お手伝いしますよ!!」
「ありがとう。これ、半分持ってくれるかしら」
手渡されたのは生徒会で用意されただろう書類。
「もちろんです!」とにっこり笑って受け取る。
一緒に並んで歩く廊下は少し静かで、そこに僕の声と先輩の声が滲む。
思い出は1つ、1つと増えていく。
僕には鮮明に焼き付いて、先輩にはありふれた一つの光景として残るのだと思う。
それは少し寂しいけど、こうして時間を共有できてるだけで嬉しい。
「瑠衣?どうしたの?」
少し先に向かって走った僕に、先輩が問う。
「せんぱい、好きです」
「……るい?」
言っちゃった!言っちゃった!
後悔はちょっとだけ、他にもタイミングあっただろってほうの後悔。
「ふふっ。冗談ですよ!」
人差し指を唇に当てて、ごまかしてみる。
「あらそう?私も瑠衣のこと好きよ。ありがとう」
なのに、そんなことを先輩は涼しい顔で告げるから、今度は僕が焦る。
「それは、どっちの意味ですか?」
「さて、どっちかしらねぇ」
嬉しそうに先輩はクスッと笑った。
どっちの意味でもよかった。彼女から「好き」を聞けたことがすごく嬉しくて。
「ほら、いくわよ」
気づいたら僕を追い抜いた先輩が振り返る
「はい!!」
僕はその後を、スキップで追いかけた
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恋花-renka-(プロフ) - みるくプリンさん» こんばんは!舞い上がって飛んでこられたところ重たい話ですみません。どうも悲恋系にハマってしまったようで……次の更新は華やかなものをご用意させていただきます! (2019年9月24日 21時) (レス) id: 6dd786bb90 (このIDを非表示/違反報告)
みるくプリン(プロフ) - こんばんは。久々の更新の通知に、舞い上がって飛んできました。なんか今回は重い雰囲気のお話ですね( o´ェ`o) (2019年9月24日 20時) (レス) id: 7db76bcf0c (このIDを非表示/違反報告)
恋花-renka-(プロフ) - 鈴歌-Rikkai-さん» ありがとうございます…!ネタ切れしちゃって更新遅くなると思いますがこれからも付き合っていただけると嬉しいです! (2019年7月23日 16時) (レス) id: 6dd786bb90 (このIDを非表示/違反報告)
鈴歌-Rikkai-(プロフ) - うみ、という話。なんか私の実体験にも似た話でちょっと切なくなりました。なんか…この小説の雰囲気大好きです。更新頑張って下さい、応援してます! (2019年7月19日 17時) (レス) id: af6ad853e4 (このIDを非表示/違反報告)
恋花-renka-(プロフ) - ナギさん» はじめましてナギさん。応援とっても嬉しいですありがとうございます!!私は仲直りすることが終に叶わなかったのです。ナギさんは御友人さんとぜひこれからも仲良くいてくださればと思います。 (2019年7月11日 22時) (レス) id: 6dd786bb90 (このIDを非表示/違反報告)
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