嫉妬 ページ10
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「そんなにそまちゃとお話する時間良かったの?」
「えっ」
そうまさんばかりに気を取られていて気が付かなかったが、ピンク色の髪の毛の彼は既に私の隣に座って少し頬を膨らませていた。
ピンク色のカラースーツ。変に着飾っていないのにかっこよく見えるのはきっと元の素材がいいからだろう。顔の一つ一つのパーツが綺麗な上に配置やバランスまでもが完璧。前世に何をしたらそんないい顔になるんだと私が神に質問をしたいくらいには人生勝ち組の顔をしてる。
「ちょっと、ヤキモチ妬いちゃうな」
ぷくっと頬を膨らませたポツリと呟いた言葉が本音か建前か全く分からない。分からないが、キュンと心が動く程には母性本能くすぐられる。
やっぱりこの人は可愛い系……? 癒し系と言ってもいいのかも。色んなタイプのホストが居るからこそこの交代制の指名は退屈しないのかもしれない。
「僕だけ見て? 今、ここは僕と君の二人っきりなんだから」
「っ!?」
「ふふっ。お仕事帰り……かな? 今日も遅くまでお仕事お疲れ様っ」
コロコロ。箱の中で左右に転がるビー玉のように目の前のあざとい男の子によって振り回される。可愛いかと油断していたら直ぐにグッと迫ってくる男らしさ。その後の抜かりない癒しの繰り返しに心臓がついて行かない。
どれが本当の彼なの。さっきのそうまさんとはまた全然違う。どんな言葉が似合うだろう。甘いけど、遊ばれてるみたいな、なんか、そう。
『小悪魔』みたいな子だ。
「ありがと、ございます」
「疲れてるのに会いに来てくれてありがとう。……そまちゃにはヤキモチ妬いちゃったけど、君が楽しんでくれてるなら僕も嬉しいっ。はい、これ。お近付きの印に。僕の名刺、受け取って?」
「……『てるとくん』……? あの、これって、本名なんですか?」
受け取った名刺。モノクロのシンプルな名刺に連絡先と名前が書いてある。別にそこまでは普通なのだが、名前に違和感を覚えた。
さっきの『そうま』さんは探せば現実にでも居そうな名前だが、『てるとくん』なんて人生で一度も出会ったことがない。キラキラネームとか……?
「ううん、違うよー。ホストは『源氏名』っていうのがあって、お店に入る時に呼んでもらいたい名前を自分で決めるんだよ」
「へぇ、げんしめい、」
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作者名:Stellar | 作成日時:2022年10月23日 12時