呼吸 ページ7
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「じゃあ、『Aコース』でお願いします。ドリンクは……、カシオレで」
「かしこまりました。では先にドリンクをお持ちいたしますね。
……今宵、アンタが幸せになって帰れますよぉに。
僕、願ってるね……?」
「っ」
最後の最後で、一番初めに出会った時ような緩い口調に戻るオレンジ色の髪の男の子。やっぱりこの子、ホストになった方が絶対いい。
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「あ。君かな? まひととちゅちゅが言ってた『かわいいお姫様』って」
「え、」
「ふふ、うん。本当にかわいい。……隣座ってもいいかな?」
黒服の男の子が出ていってからすぐに入れ替わりでやってきたのは高身長イケメンだった。
オーバーサイズのカラースーツを着ているのにも関わらず、ガタイの良さで着せられている感がない男性は『優しいお兄さん』というワードがとてもよく似合う。
金色の前髪を上に上げてピンで止めている。赤い瞳が優しく弧を描き、にこっと微笑む姿で惚れる女の子がいるんじゃないかと思うほど破壊力があった。
「あ、も、もちろんです……っ」
「ふはっ。緊張してる? もしかして。大丈夫。力抜いて?」
抜けるものなら抜きたいです、こっちも。
黒服の男の子が持ってきたタブレットに載ってた顔写真のまま出来ている事に驚いている。ああいうのって加工で少しイケメンにしているんだと思ったけどそんなことない。本当に、本当にこの人イケメンなんだ……。この人が現ナンバー1ホスト……。
「これ。頼んでたカシスオレンジね」
「ぁ、りがとうございます、」
「後、コレは俺の名刺。『そうま』って言うんだ。名前だけでも覚えて帰って?」
「っ、は、い……」
ちっかい。近い近いよ。何この距離。キスしちゃう距離だって、ちっっか。
つい数時間前彼氏と友達の浮気現場を見た後とは思えないほどの甘々な空間に脳がバグる。洗剤とは違うフローラルないい匂いもして来てぐるぐるぐるともう頭が先に回ってしまう。
「まだ、ドキドキしてる?」
「すみませ、」
「じゃあ、手。出して?」
「え、」
何をされてしまうのか全くもって分からないがとりあえず言われた通りに手を出せば、一回りくらい大きい手が重なる。
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作者名:Stellar | 作成日時:2022年10月23日 12時