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「えっと……」
「あ、ご飯は食べた？ スーツって事はまたお仕事帰りだよね？ もしかしたらご飯まだなんじゃない？」
「あ、そうです。仕事終わってすぐ来ちゃって……」
「なら、なにかツマミながら食べないとだね。一応フードもあるけど」
ピラッと開いたメニュー。料理の写真は乗っていないものの、イタリアンやフレンチみたいな全然想像もつかないような名前が乗ってる訳では無いので想像出来る。
けど、やはりファミレスなんかと比べれば五倍くらいの値段だ。
「これって、てるとくんも食べれるの？」
「え、」
「あ。なんか。ひとりで食べるのもなぁ、って思っちゃいまして」
「基本はお姫様が食べてるけど、食べてって言ったら食べるよ？ お腹すいてたらね」
お酒の場合はボトルであればお客様と一緒にホストも飲むらしい。店によってこの辺は異なるが、ここでは【飲ませ料金】は発生しない。
「今、お腹すいてる……？」
「うーん、ちょっとだけ」
「じゃあ、ポテトとか」
「え、やったぁ。てるさんポテトすき」
ニコニコと自然な笑顔が見られた。
なんか、かわいい、かも。
なんて思っていれば「頼んでもいい？」とおねだり。拒否する理由もないためこくんと頷けば、通りかかった黒服さんに声をかけた。
「このポテトと……、モエ持ってきて？ シャンパンは僕で落としていいから」
「えっ」
「かしこまりました」
モエって、この『モエシャン』のこと！？
一本五万円って書いてあるけど……っ！！
しかもてるとくんが払ってくれるって何事！？
黒服さんがメニューと一緒に奥へと引いたあと「あのっ、」と声をかけたが、唇に触れた彼の白くて長居人差し指が私の言葉を止める。
「ちゅちゅから、『同伴』の話は聞いた……？」
「……っ、」
「そっか。まだ、誰からも誘われてない、よね？」
「ッ」
「なら。……、僕と同伴してください。
……君と、ここ以外でお話してみたいな」
言葉は声にならない。
ただ頷いていたが三回目の肯定をする時に揚げたてのポテトと彼のピンク色の髪よりも少し赤いモエのシャンパンが届き、黒服さんはこの状況もまるで普通だと言うように二つのグラスにピンクが注がれる。
「……もし、行きたいって君も願うなら、シャンパン、僕と一緒に飲んでほしいな」
キラキラと輝くエメラルドの瞳がアルコールを入れていない私を酔わせ、甘い誘惑に手を取った。
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One Knight �� 【完】
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作者名：Stellar | 作成日時：2022年10月23日 12時
