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 この時間が終わってしまえばもう、明日への準備をしなくてはいけない。短い時間。でも、彼氏と過ごしたくだらない時間よりも圧倒的に色のある世界は忘れていた色々な感情と表情を呼び出す。


 ここは。多分夢の世界。
 現実から切り離したい女の子が集う場所。

 もっと、ここに、居たいな。







 時計の針はもう初めましてから一八〇度ひっくり返ってしまっている。初回の夢はもうおしまいなのだ。それでもゆきむらさんは指先を離すことはなくてただじっと私を見つめている。


「……本当に無理になったら、またいつでも来な。たぶん、ここにいると思うし。お前の居場所はちゃんとココにあるから。どうでもいい事に押しつぶされそうになったら来いよ。
……ずっと待ってるから」


 そう言い残して、彼の冷たい温度が消える。
 すっと立ち上がった彼は振り返ることなくまた厚い靴の音を鳴らしながら店の奥へと行ってしまった。







「初回限定『Aコース』は以上となります。……どうだったかなぁ?」
「あっ、う、……まだ、ちょっと胸がドキドキしちゃってて、」
「あははっ。そうだよねぇ〜。み〜んな、かっこいいから、ドキドキしちゃうよねぇ〜」


 入れ替わりで黒服のちゅちゅくんが跪いてお話をしてくれる。これで全ての体験が終わってしまったのだ。本当に一瞬。まだ話していたかったという名残惜しさもある。「今夜の金額になります」とまたかしこまった口調に戻ったちゅちゅくんが渡した伝票には三千円の表記。


「あれ? ドリンク代は……」
「ゆきくんがサービスって。払ってくれたんだよ」
「……えっ、そんな」
「今夜は甘えてよ、お姫様。……僕たちは、こんな形でしかアンタを喜ばすこと出来ないんだから」


 「ね?」と優しく微笑むちゅちゅくんにこくんと頷く。


「それとね? 初めに言っておくの忘れちゃってたんだけど、『お見送り指名』をアンタしなくちゃいけなくってぇ……」
「あ、そうまさんが言ってた……」
「そう! それぇ。僕もさっきそまくんに注意されて気がついたんだぁ。……ごめんね……?」
「ぜっ、全然……! 大丈夫だよっ!」
「じゃあ、一人。選んで頂けますか? お姫様」







🔗◦⚬【One Knight

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作者名:Stellar | 作成日時:2022年10月23日 12時

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