絶望 ページ2
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一気に裏切られた。
残業して疲れきった身体で家に帰れば、彼氏と私の友達が全裸でベットの上で寝ている。真っ暗な部屋に不安を覚えながら電気をつけた光景がこれだ。
鈍器で頭を殴られたような感覚。
「なっ、お前、今日は帰ってこないんじゃ……!」
直ぐに彼氏は友達の身体を隠して自分の上半身は見せたまま。彼女が帰ってきたというのに他の女に気を使う男が憎く見えた。
帰ってこなかったらずっとしたままだったんだ。私が居ないのを分かっててしたことなんだ。せめて、その場の雰囲気でなんて言ってくれたらまだ許してあげたのに、二人して私のこと騙してたんだ。
「……ッ、さいてー、」
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今思い返しても腹が立つ。
初めて出来た彼氏。嬉しくって「あのね」と友達に彼氏が出来たことを報告したのはちょうど一年ほど前の話だ。「おめでとう」って自分のことの様に喜んでくれて、小さな悩みからくだらない相談まで全部その子にだけしてた。
なんせ友達は学年で一番モテはやさせるほどの美人で、小中高と年齢を重ねてもその人気が途絶えることはなかった子。恋愛経験も私とは比べ物にならないほど豊富。だからアドバイスを貰いたくて、失敗したくなくて色んな話をしてたのに。
「……ばかみたい、」
一気に二人に騙されたような気分。
なんで。最近仕事続きで愚痴ばっかり吐いてたから……? でもなんでも言っていいよって、頼っていいよって言ってくれたのに。頼りすぎちゃったからこうなったの……?
友達も私が頑張ってる姿を見て嫌いになったりしないよって教えてくれたじゃん。
……そっか、全部、全部こういう関係に持って行きやすかったからか。本当に騙されたんだ。きっとあのベッドの上で罪悪感よりも背徳感に興奮しながら身を重ねて私のこと馬鹿にしてたんだ。
「大丈夫だよ、あの子、全然気づいてないんだもん」そう言って赤い唇を三日月形にして嘲笑っているのを想像する。ずっと、ずっと、手のひらの上で転がらされてた。何も知らない私を二人で笑ってたんだよ。絶対、ぜったいそう。
現に彼氏も友達も追いかけて来ないのがいい証拠だ。本当にあの二人にとって私は邪魔な存在でしかなかったんでしょ。
パワハラセクハラお構い無しの会社に行けていたのも彼氏が毎日家で待ってくれていたから、頑張れた。友達が愚痴も相談も聞いてくれたから気にせずに居られたのに、もう、もう。
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作者名:Stellar | 作成日時:2022年10月23日 12時