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「昔から彼は少しずつ力を付けていました。10年程前から小さなグループを作り始めて、それがどんどん大きくなった結果が今の組織です」
fk「そんなにでかいなら俺でも存在くらい知っててもいいような気はするけど」
「彼は身を守るためにどんな些細な情報も洩らさないようにしています。少しでも彼等の存在に気付いた人間はすぐに消されます＿＿僕は消すより使う方がメリットがあると判断されたようですが」
男は無表情のまま、あくまで淡々と話を続ける。
そこまで聞いて今更ながら深澤は気づいた。
彼は「Team S」がラウールを連れ去った事を知っている。つまり。
fk「……あの子の居場所をその、Fに教えたのは貴方ですか」
「ええ」
fk「……そうですか」
深澤は一瞬憤りを感じたがその気持ちはすぐに抑えた。
彼は彼でビジネスをしただけ。むしろ、これで仲間内に裏切り者がいない事が証明されたではないか。
深澤は気持ちと思考を落ち着けるために深呼吸した。そこでふと気づいた。
fk「じゃあ……なんで家族は殺されたんだ?」
「逃げ道を潰すためだと言ってました」
fk「逃げ道?」
男は手を止めずにロボットのように話す。
「あの子に危険が迫っていると知った時、あの子を家族の元に返して逃がすかもしれない、と。家族の居場所は独自に調べたようですが」
fk「そんな……」
逃げ道を潰す、なんて理由で彼の家族を奪ったのか。抑えた怒りが別方向に向かって火の手を上げようとしている。
これ以上ラウールを傷付けさせる訳にはいかない。Fとやらは必ず潰さなければいけない。
「出来ました」
男はスケッチを深澤に見せた。短時間で描かれたクオリティの高い似顔絵は、間違いなく彼が依頼を受けた男だった。
2度も依頼をして来た男。そのせいか、やけに既視感のある顔。
この顔を見て阿部は何か思いついてくれるだろうか。
fk「ありがとうございます」
「いえ」
fk「他には何か知りませんか。何でもいいです、どんな些細な事でも」
折角のチャンスだ、得られる情報は何でも手に入れたかった。金はできる限り金庫から引っ張り出してきた。文句を言われるのは承知の上だ、最悪自分で取り返す。
サイレントモードの端末が何度も光っている事には気づいていなかった。
男は思いつく限りの情報を話した後、指を擦りながら考え込むと、申し訳程度に情報を付け足した。
「……昔子供がいたそうです」
fk「子供?」
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作者名：怜
| 作成日時：2020年8月12日 21時
