Hope In The Darkness Ⅲ (ページ14)

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fk「……目星ついてんの」
ab「証拠は何にもないけど、仮説はある」

阿部は脳内で組み上げた仮説を深澤に話した。
あの時狙われたのは恐らくラウールである事。彼を狙ったのには＿＿あるいはラウールの家族を奪ったのにも＿＿大臣暗殺を依頼した人間が関わっている可能性があるという事。
深澤はそこまで聞くと、阿部が用意していた質問を待たずして答えを告げた。

fk「依頼人は60代くらいのおっさん。顔も見たから写真とかがあればこの人って分かるけど……」

写真なんて持っている訳が無い。交渉時に何処かの防犯カメラには捉えられたかもしれないが、数ヶ月経った今となっては流石に調べられるとは思えない。
防犯カメラのデータなど一週間、長くても一ヶ月程度しか保存されないはずだ。
阿部は煙に若干の落胆を混ぜた。

ab「……他には」
fk「……あの依頼は二回目だった。要するにリピーター」
ab「二回目?」
fk「一回目は大した依頼じゃなかったから、二回目であんな依頼されてちょっとびびったんだよ……たんまりくれたし、愛想よかったから引き受けたけど」
ab「ふーん」

あんな大きな依頼を「Team S」に依頼してきた理由はわかった。顧客満足度が高い事は何よりだが、そこは恐らく重要ではない。
そう判断した阿部は、他には、と深澤をせっついた。

fk「あー……よっぽど俺達の事気に入ってくれたのか、名前まで教えてくれた」
ab「は!? お前それ早く言えよ」

阿部は思わず身を乗り出した。名前が分かれば阿部の脳内の情報網に引っかかる可能性が高い。

fk「いや名前っつーか……コードネーム?」
ab「いいから言えよ」

深澤は煙草を口に咥えると、空いた右手で宙に曲線を描いた。

ab「……6?」
fk「あの人はこうやった」

咥えたまま深澤が言う。阿部は脳内に検索をかけた。
しかし、6、そう呼ばれている人間に心当たりはない。
何かを表す記号か。6、六、six、あるいは五十音の6番目は「か」? もしくは「は行」? アルファベットなら6番目はF、そういう事か? それとも6種類の何か? あとは?

fk「……阿部ちゃーん」
ab「……」
fk「おい危ない」
ab「……あ、ごめん」

灰が落ちる前に深澤が煙草を取り上げた。それでようやく阿部は戻ってきた。

ab「……だめだ、情報が足りない」
fk「ですよねー、どうすっかなあ……繋がってそうなコネあったっけか」

深澤と阿部は煙草をもう一本咥え、各々の思考の海に沈んだ。