17 ページ37
fk「お前がここに来てからそんなに経ってないけどさ……お前が良い奴だって事はよく分かったつもり。多分ここにいる全員がそう思ってると思う」
口を挟む者はいない。沈黙は肯定である。
fk「酷い扱い受けても、腐らないで頑張って生きてきたんだってのが凄く分かるんだよ」
向井はここに来てから、ずっと彼等6人に尽くしてきた。
Barでは懸命に働き、裏家業に出かけたメンバーを軽食と共に出迎え、家事も積極的に手伝った。
ここまで健気に純粋に尽くされて、何も思わないほど薄情な者はここにはいない。
fk「なのにそんなお前がこんな目に遭って……俺もう黙って見てらんないんだけど」
kj「……っ」
深澤の言葉に来るものはあったが、向井はそれを撥ね除けた。
kj「……やっすい同情」
iw「康二」
fk「そんなんじゃない、」
kj「やめてや!!」
向井が突然声を張り上げたので、深澤は二の句を継げなかった。
自分でも声の大きさに戸惑ったのか、向井は再び俯いた。
kj「……もう嫌やねん」
fk「……」
kj「どうせ最後は独りになんねんで……もうこれ以上、期待するのは怖い」
優しくしてくれていたはずの母親は、ある日突然蒸発した。
自分に良くしてくれていたはずの若頭は、もうこの世にはいない。
向井の声が震えていく。床に一粒、雫が落ちる。
kj「もう裏切られたくない……、結局みんないなくなるやろ……!」
iw「いなくならねえよ」
はっきりと言い切ったのは岩本だった。
恐る恐る顔を上げた向井の顔を、岩本は真っ直ぐに見つめていた。
iw「俺たちはいなくなったりしない、絶対に」
kj「……嘘や、」
dt「本当だよ」
向井の言葉に食い気味に返したのは宮舘。そこに渡辺が続いた。
nb「……信じられないなら一人で頑張って生きれば」
kj「っ……」
nb「でもなあ、本当に独りで生きるのは……辛いぞ」
その言葉に向井は息を飲み、宮舘は目を伏せる。
＿＿もう……独りにはなりたくない。
fk「なあ……俺たちじゃだめか」
kj「……」
fk「そりゃあ……あくどい事しかやってねえから、もう後戻りは出来なくなるけど」
ab「……この世界は甘くないからね」
sk「だーいじょうぶ! みんなでいれば怖くない!」
彼等の一言一言が向井に纏わり付く孤独を払っていく。
その孤独は涙となって、少しずつ向井の中から消えていく。
kj「……絶対、いなくなったりせえへんの」
fk「しない」
kj「っ……信じるで」
fk「うん」
堰を切って流れる涙はもう、止まらない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1681人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かるうら(プロフ) - おもしろいです！ 唐突に出てきたゆり組厨の阿部ちゃんがツボでした 笑 康二編、めっちゃよかった……！！ 続編へ行ってきます！ (2020年7月16日 6時) (
レス) id: 2c64977e89 (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - くりこさん» コメントありがとうございます! オーバードーズって書きたかったがためにあのページが出来たと言っても過言では無い……笑 これからもお付き合いよろしくお願いいたします! (2020年7月10日 22時) (レス) id: 03141f9b41 (このIDを非表示/違反報告)
くりこ(プロフ) - 楽しみにしていたぱっちパロ最高です！個人的にラムネをオーバードーズがツボでした(笑)これからも応援しています！ (2020年7月10日 0時) (レス) id: 0f5ac3f652 (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - 淡雪さん» コメントありがとうございます! パッチは正直雰囲気しか知らないのですが、雰囲気だけでも近づけられるように頑張ります……! これからもよろしくお願いいたします! (2020年7月4日 21時) (レス) id: 03141f9b41 (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - ハンナさん» コメントありがとうございます! 闇の設定は作者の性癖です…楽しんで頂けると嬉しいです! これからもお付き合いよろしくお願いいたします! (2020年7月4日 21時) (レス) id: 03141f9b41 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：怜
| 作成日時：2020年7月1日 19時
