episode48 ページ48
隣で俯いている侑くんが泣いている事には気付かないふりをして、数十分が経った。
今ここで彼を慰める権利は、私にはない。
『…私の事は忘れて、バレーも勉強も頑張ってね』
そろそろ区切りをつけようと思ってベンチから立ち上がり、荷物を背負った。
……これで良い、はず。
突き放さなきゃ、これからがお互いに辛い。
今ここで侑くんを突き放すのが、きっと模範解答なんだと思う。
今まで楽しかったよ、侑くん。
ごめんなさい。
駄菓子屋と侑くんに背を向けて、歩き出す。
"なんや、今日1日でえらい仲良うなった気いするな"
"そうだね、私もそう思ってたところ"
……私も全部、忘れてしまおう。
チリーンッ
風鈴が妖しげに鳴った。
「……Aさんは、忘れられるん俺の事」
制服の裾を掴んだ侑くんに、引き止められた。
突き放すのが模範解答、わかってる。
それでも……
"俺が性格悪いって分かっても、こうして俺と仲良うしてくれて嬉しいってこと"
あの雨の日、侑くんはそう言った。
今更、突き放せる……?
侑くんの目にはまだ涙が残っていて、
目も腫れてるし、声も掠れていた。
侑くんの事、忘れられる……?
『………無理に、決まってる』
侑くんの整った顔が不敵に笑った。
そこで気がついた。
私が最後の最後でやらかした事に。
侑くんはベンチから立ち上がって私の隣に立って言った。
「……うん、知ってる
俺はAさんの"特別な存在"やからなあ」
出会った当初に感じた、「こいつとは関わらない方がいい」という直感は正解だったのかもしれない。
「俺も忘れる気なんて無いで?」
泣いていたのは演技なのか本当なのか、首をコテっと傾げて目を合わせてくるこの悪魔。
ニヤニヤしているこの性格の悪い後輩は、未だに私の弱みを握っている。
944人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
赤羽 - うわああああこれ好きすぎる (4月8日 23時) (レス) @page50 id: b22b7ccd76 (このIDを非表示/違反報告)
mia - 侑切ない…(´TωT`)侑とくっついて欲しいけど、北さんともくっついて欲しい…続き楽しみにしています!!これからも頑張って下さい!! (2020年3月24日 11時) (レス) id: 3bb55163e6 (このIDを非表示/違反報告)
もちねこ(プロフ) - りおなさん» いつもコメントありがとうございます!長編となりますが最後までお付き合いよろしくお願いします (2020年3月18日 0時) (レス) id: bf7fa3a49d (このIDを非表示/違反報告)
りおな(プロフ) - 今回もドキドキをありがとうございました…文化祭編も卒業編も楽しみにしてます(T_T) (2020年3月17日 0時) (レス) id: 3541b5b7c1 (このIDを非表示/違反報告)
もちねこ(プロフ) - 輝星さん» そんな風に言っていただけて光栄です…更新頑張らせていただきます! (2020年3月16日 1時) (レス) id: bf7fa3a49d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:もちねこ | 作成日時:2020年2月17日 18時