【宮侑】後輩に弱みを握られた【北信介】

episode42 ページ42

宮 侑 side




"以上をもちまして、午前の部を終了します。午後の部は1時より開始します_______"





放送部のアナウンスが体育祭の前半の終了を告げる。










前半は最悪やった。


女子は集ってうるさいし、リレーはサムに負けたし。







一旦頭冷やそうと思うて体育館横の自販機に寄る。


風通しええし、人もあんま居らんやろうし。














そう思って体育館の角を曲がったら


自販機の前に立っとる北さんがおった。















「北さんお疲れ様です。飲み物買いに来たんですか？」



「おん、自分用の買い忘れとってん」








自分用の忘れる？


ちょっと意味わからんかったけど、どうやら自分用のスポドリを買いに来たらしかった。














「さっきのリレー惜しかったなあ」



「見てたんですか……」






サムに負けた所目撃されるとか、ほんま最悪や…


はぁぁぁぁあ、と頭を抱えると北さんはキツネのような目で俺をジッと見て言った。














「おん、九条も一緒やったで」




「えっ、あぁ、A、さん……」












名前聞いただけでドキッとした。


今北さんの口からAさんの話聞くの心臓に悪いねん…ピンポイントで出てきてきたらビビるわ。



















「……同じ反応やな。はよ仲直りせえや」













バシッと頭にチョップを食らう。


地味に痛いねん…







仲直りせえやって、エスパーかいなこの人。


何でもお見通しか。


















ガタンっと音を立てて自販機の下からスポーツ飲料が出てくる。



北さんはそれを取って俺に差し出した。













「北さんの気まぐれスポーツ飲料や。」



「えっ？奢りっすか！！ありがとうございます！！」



「おん」








ガバッと頭を下げて受け取る。


北さんの気まぐれスポーツ飲料て、シェフの気まぐれパスタみたいやな。















そんな呑気なこと考えよると、隣から凄い圧の視線を感じて、恐る恐る顔を向けると北さんと目が合った。























「今日、九条から逃げたら許さへんからな」











様子を伺ってるような、どう出るか観察してるみたいな目で俺を見上げてくる北さん。




冷や汗が背中を流れる。






何度も何度も、大きく縦に頷いたら

ほんならええわって言って次は自分用のスポドリ買いよった。











ようわからんけど、やっぱり怖いわこの先輩。

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